と考える⼈もいます。もちろんそれは⾮⽇常の貴重な体験ですが、幼児期には特に⽇々の⽣活の中で、⼦どもたちが主体的に⾃由に関われる⾝近な⾃然が⼤切です。その恰好の場が幼稚園や保育所などの園庭であり、そこに⽣息している⾍たちなのです。ある園の園庭で私が⾒つけただけでも300種を超える⾍がみつかりました(Web図鑑「奈良⼥⼦⼤学附属幼稚園 園庭のむしあそび図鑑」を覗いてみてください)。毎⽇⼦どもたちは嬉々としてダンゴムシを集め、トンボを追いかけ、イモムシを捕まえています。まさに、⾍は⼿のひらの中の⼩さな野⽣であり、いじって遊べる命なのです。 3〜6歳の幼児に園庭に⽣息している15種類の⾍(アゲハチョウやクロヤマアリ、ハラビロカマキリなど)についての知識や好き嫌いを尋ねたところ、【⾍苦⼿群】【⾍嫌悪群】【⾍好き群】【⾍知識豊富群】【無知・⾍嫌悪感低群】の5グループに分かれました(藤崎・⿇⽣, 2022)。特に年⻑の⼥児では【⾍苦⼿群】や【⾍嫌悪群】が増えていました。幼児期にすでに⾍への嫌悪感が⽣まれるのであれば、就学前からの教育が⼤切になります。必ずしも皆が【⾍好き群】のように⾍を好きになる必要はありませんが、【⾍嫌悪群】のように⾍を避け始めると⾃然全般への関わりが希薄になってしまいます。それを防ぐためにも、まだ⾍への嫌悪感が低い年少児の時期から、丁寧に⾍を含めた⾃然との関わり・接点を育んでいくことが重要でしょう。 また、【⾍苦⼿群】はチョウやテントウムシなど、カラフルで絵本などのモチーフとなっているような⼀部の⾍は好みますが、それ以外はあまり知らないのが特徴です。さらに、カマキリやバッタなども害を及ぼしそうという理由で嫌う特徴があります。園庭に⽣息する危険な⾍について必要最低限の情報を伝えることで、無⽤な危機感を減らし、⾍への嫌悪を増⼤させていくことを防げるでしょう。そのためには、保育者の適切な関わりが求められるのです。だからこそ、保育者⾃⾝の⾍への苦⼿意識を緩和することは、とても⼤切な課題だと考えています。そして、【⾍好き群】の⼦どもたちとも⼀緒になって⽣きものの世界を探究していけるような⾍好き、⽣きもの好きな保育者が増えてほしいと思います。
元のページ ../index.html#8