ならやま 2014年春号

ならやま 2014年春号 page 3/24

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特集さらなる連携に向けて長友恒人奈良教育大学長中室雄俊奈良市教育委員会教育長対談ながともつね恒奈良教育大学長長友人奈良教育大学教授、奈良教育大学副学長(研究担当)などを経て、平成21年10月に奈良教育大学....

特集さらなる連携に向けて長友恒人奈良教育大学長中室雄俊奈良市教育委員会教育長対談ながともつね恒奈良教育大学長長友人奈良教育大学教授、奈良教育大学副学長(研究担当)などを経て、平成21年10月に奈良教育大学長に就任。専門は文化財科学、物理学。となかむろたけとし奈良市教育委員会教育長中室雄俊氏奈良市教育委員会少年指導センター所長、奈良市立都南中学校長、奈良市教育委員会学校教育課長及び学校教育部長などを経て、平成21年4月に奈良市教育長に就任。奈良で学ぶ世界遺産学習──世界遺産学習について、どのような取組をされているのでしょうか。中室世界遺産学習は、奈良教育大学と一緒に作り育ててきた事業だと思っています。振り返ってみますと、平成10年に「古都奈良の文化財」が世界遺産に登録されましたが、奈良市立の小学校では、平成13年から5年生を対象にして世界遺産現地学習を始めました。当初は主に世界遺産を回る社会見学のようなものでした。その後、当時奈良教育大学の教授でおられた田渕五十生先生(奈良教育大学名誉教授、福山市立大学教授)と出会い、奈良市の世界遺産学習をどのようにして進めていったらよいのかを議論していく中で、奈良にある歴史や文化や伝統を、しっかりと子ども達の中に根付かせたい、文化や伝統を営々と営み、残してくれた先人の思いを子ども達に学ばせたいという、現在行っている世界遺産学習の方向性が見えてきました。そこで「奈良で学んだことを誇らしげに語れる子」をスローガンに、具体的な取組を始めていきました。長友生まれ育ったところは、誰でも懐かしさを感じるけれども、誇れるということになれば、そこをさらに良くしていこうという芽生えになると思います。本学は、世界遺産学習や文化遺産学習をESDの切り口の一つとして位置づけるというスタンスでこれまで協力させていただいています。実践で色々と聞かせていただき、こちらも刺激を受けました。世界遺産学習を、日本の中で真正面に高く掲げてできるのは、やはり奈良だろうと思っています。中室私自身、奈良で生まれて奈良で育っています。子どものころは、祖父に連れられておん祭を見に行ったり、お水取りや山焼き、近所の寺社のお祭りなど、いろいろな行事を見に行ったりしました。そして、機会あるごとにその行事のことや奈良に伝わる民話や伝承などを教えてもらったものでした。しかし、今ではそういったことを話すことができる大人が少なくなってきているように思います。親子で奈良の伝統行事や地域のお祭りに出かけることもなくなってきているのではないでしょうか。長友4、5年前に、本学の協定校である西安外国語大学で、日本の文化財の講義をしました。そのとき大学の近くにあるお地蔵さんの写真を見せながら、古い文化財だけでなくそういったものも伝統として生きているという話をしました。奈良市内の小学校で、それと同じ着想でお地蔵さんを調べ、町のおじいちゃんやおばあちゃんに話を聞くという取組を行っているところがあります。世界遺産学習のサブテーマとしてそういった地域遺産学習の取組を組み入れると、世界遺産がない地域の教育委員会や学校も参加できるようになり、世界遺産学習がより広がっていくのではないでしょうか。中室そうですね。「世界遺産があるから世界遺産学習ができる。」という声をよく耳にします。しかし、そうではなくて、子どもが自分の身近にある文化や歴史、伝統を、誰が、どのようにして守り伝えてきたのかを知り、その町で生まれ、育ち、教育を受けてきたということが自らのアイデンティティを確立していくことにつながっていけばいいなと思っています。実際、奈良教育大学と一緒に組織している世界遺産学習連絡協議会には、橿原市や桜井市、香芝市、安堵町のように世界遺産のない市町村も加盟していただいており、世界遺産学習を推進してくださっています。将来、子ども達が大人になり、世界に出ていった時に、自分の国はどのような国で、どのような考え方を持っているのかということをきちんと話すことができないと、文化も価値観も違う人と交流できないと思います。単に英語が上手とかICTの機器が使えるとかいうことではないと思います。そういうことができる力を持った日本人こそが、グローバルな社会をたくましく生き抜いていけるのではないでしょうか。そのために、私達は義務教育の中で、自分の育った所や今生きている所を大事に思う心を育てていきたいと思っています。それが世界遺産学習で一番大切にしていることです。SPRING 2014ならやま_2