ブックタイトルならやま 2014夏号

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概要

ならやま 2014夏号

SスtancuタンクAアndreea-Mンドレアミihaelaハエラさん(ルーマニア)お気に入りのパルテ(講堂)前でたくさんの人が弁論大会の応援に来てくれました日本での経験を生かしてさらに研究を深めたい平成26年5月24日、松江市で「第55回外国人による日本語弁論大会」が開催されました。この弁論大会は、外国人を対象とする日本語弁論大会としては最も歴史のある大会で、スピーチ原稿や録画映像による予選審査を勝ち抜いた者だけが本選に参加できます。今回は、予選審査を見事通過し、本選に出場したルーマニアからの留学生スタンク・アンドレア・ミハエラさんに話を聞きました。口に出さない言葉の力弁論大会でのアンドレアさんの演題は「口に出さない言葉の力」。これは、日本での実体験に基づくものです。アンドレアさんは、本学で学びはじめてしばらくしてから、弓道部に入部しました。ルーマニアでは、弓道はほとんど行われておらず、日本に来ないとできないことをやりたいという思いから弓道を選んだそうです。そんな弓道部では、初めてのことや慣れないことの連続で失敗ばかりしてしまい、いつも暗い顔をしていました。そんな中、失敗したことへのお詫びの気持ちを示そうと、師範にバレンタインのチョコレートを用意したアンドレアさん。師範に渡したところ、師範はまじめな顔で「これは本命チョコだね」と言い、義理チョコだと伝えると残念そうな様子で「本命チョコじゃなくて残念だよ」と言ったそうです。その様子を見ていた他の部員は大笑いし、アンドレアさんも楽しい気分になり、元気が出ました。いつも厳しくまじめな師範が、どうしてこのような冗談を言ったのか疑問に感じたアンドレアさんは、その意味を考えた結果、一つの答えにたどり着きました。それが「口に出さない言葉の力」です。師範の行動の背後には別の意味が隠されており、失敗して落ち込んでいるアンドレアさんを、間接的な方法で応援しようとしていたのです。直接「頑張れ」と言われていれば、さらに落ち込んでいたかもしれません。直接口に出さずに間接的に伝えることで、直接伝えるよりも効果的な場合もあるのです。「口に出さない言葉の力」を実感した出来事でした。練習を重ねて本番に臨む弁論大会では、単に日本語を話せば良いという訳ではありません。6分間という決められた時間の中で、自分の考えを聞き手にわかりやすく伝えなければなりません。そのためアンドレアさんは、先生や他の留学生を相手に、数え切れないくらい練習をし、本番でも練習と同じように落ち着いて話せるように準備をしたそうです。当日は、あいにく体調がすぐれない状態での発表となりましたが、遠くまで応援に来てくれている先生や友人、そして発表を聞いてくれている人々をがっかりさせてはいけないという思いから、舞台に上がって話し始めると緊張や体調不良はなくなり、無事練習通りに発表することができました。日本での経験を基にさらに研究を深めるルーマニアでは日本語と日本文学を専門に学んでいたアンドレアさん。来日前に日本人の本音と建前に関する文献を読み、日本人がどんなときに本音を使い、どんなときに建前を使うのかが理解できず、日本に来るのが怖かったそうです。しかし、弓道部の活動などで実際に日本人と接するうちに、イメージは変わっていきました。そのことが印象的だったアンドレアさんは、帰国前に提出する最終レポートにおいて、本音と建前に関する事項を取り上げています。帰国後は、日本で学んだり実際に感じたりしたことなどをきちんと整理し、それらを生かして引き続き日本語と日本文学に関する研究を続けるそうです。読者へのメッセージ最後に、読者へのメッセージをいただきました。「留学は怖いことだと思うかもしれませんが、自分の力を試しそして成長させることができる良い方法です。自分が目指していることの実現への手助けとなり、自分が学んでいることを深める機会となります。また、世界中から来ている留学生と仲良くなることで、世界中に友達ができます。ぜひ留学してみてください。」19_SUMMER 2014ならやま