ブックタイトルならやま2014秋号

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概要

ならやま2014秋号

特集奈良県教育委員会と奈良教育大学の連携・協働による教員づくりばたくさん引き出しをもっているので、いろいろな興味ある話をすることができます。教員は専門以外の分野も幅広く学ばなければならない吉田中学校や高校の教員は、一つの専門教科が中心になりますので、その教科については、関心をもって学んだり、いろいろな本を読んだりしています。しかし、小学校の教員は、全教科を教えることになるため、得手不得手が当然出てくるわけです。その中で、あらゆる教科についてどれだけ多くの引き出しをもてるのかどうかが鍵になってくると思います。大学での学びだけでそれを身に付けることは難しいでしょうから、採用後の研修でも引き続き身に付けてもらうということが大事だと思うのです。私が大学生の頃は、一般教養が2年間あり、理学部数学科の所属でしたが、哲学や東洋史、法学、日本国憲法、そして物理学やコンピュータ概論など人文科学、自然科学、社会科学から幅広く選択して学ぶ機会がありました。今の大学生はどうなのでしょうか。長友我々から見ると、幅広い知識や経験をもっているかという点では、今の大学生はやはり物足りないと思いますが、彼らは彼らなりに一生懸命なのかもしれません。私が30代~40代の頃に教えていた学生と今の学生を比べると、やらなければならないことがたくさんあります。学校現場の状況も変わってきていますので、座学で知識を詰め込んで教員になれる時代ではありません。スクールサポートやボランティアの経験もしなさいという指導があり、体験的に学ぶという要素が加わっています。また、外国でいろいろなことを経験するということや、家庭の経済状況の悪化により、学費を自分で稼がないといけない学生が増えたという状況もあると思います。吉田私は、嫌なことや自分の専門と関係なさそうなこともしっかりと学ばないといけないとやすひろよしだ奈良県教育委員会教育長吉田育弘県立高校教諭、奈良県教育委員会事務局教育次長、同理事などを経て、平成26年4月に奈良県教育委員会教育長に就任。専門は数学。思っています。例えば国語を専門にしたいと大学に入ったとして、国語については関心や意欲をもっているので、自ら学ぶでしょう。しかし、それだけでなく、数学や理科などの自然科学分野の一般教養もしっかり学ばせることが大事だと思います。逆も同じで、数学や物理などを専門にやろうとしている学生が、芸術や国語、哲学、法学などの一般教養を学ぶということが減っているのではないかと思っています。長友本学の一般教養は、ジャンル別にくくられていて、それぞれのジャンルから選択します。学生自身がおもしろいと思って受講するものだけではなく、教員の目や大人の目から見て、将来のために勉強しておくべきだという科目も受講できるようになっています。また、小学校免許取得の必修科目は、教育職員免許法が変わって、教科専門の単位をあまり多く取らなくても免許が取得できるようになりました。本学の初等教育履修分野では教職科目の教科等専門科目は、国語、社会、算数、理科が必修、その他は2教科以上選択です。他に自分が所属する専修の中等教育履修分野が展開する教科専門の基礎科目を必修として履修することになっています。ですから、ある教科については相当のレベルまで学習するが、その他の教科は「広く浅く」というカリキュラムです。吉田ということは、以前のように、どの分野も高度な分野まである程度やっているということではないのですね。正直に言うと、実際の教育現場では、苦手分野をもっている教員がたくさんいます。つい最近の実態ですが、校内にある百葉箱を鳥の巣箱だと子どもたちが言っていた学校がありました。理科で百葉箱が使われていないという実態がうかがえます。当然知っていて、理解していないといけない基礎・基本の知識が、不足している教員がいるというのが現実です。しかし、それを学び直す余裕がなく日々の実践に追われているのではないかと思います。小学校教員は、採用後の研修時に、弱いところを一定レベル以上にまで上げるということをしていかないと、教科によっては子どもたちが興味・関心をなくしてしまうのではないかと思います。長友高校レベルでも同じだと思います。この教科はおもしろくないけれど、将来役に立つから知っておけよということです。「学習」ではなく、必ずしも興味がもてない「勉強」も必要ですね。吉田確かに、受験科目に特化したカリキュラムで、文系コースに入ると数学は勉強しなくてもよいというのは行き過ぎだと思うんです。教養として高校で身に付けるべきことをきちんと身に付けて卒業することが、大学に入った時にも力になってきます。長友今、中央教育審議会で高大接続の議論がされています。高校、大学にはそれぞれの役割がありますが、高校では大学受験に特化した学習ではなく、受験に関係のない教科についてもしっかり学んでおくことが必要です。大学に入ると、高校までの学びをベースにして、自分の専門を深化させる学習になります。特に修士や博士まで行くのであれば、一見必要ないと思われるものについても基礎的な知識を持っておくことが重要で、それが研究のベースになります。吉田私は高校で数学を教えていましたが、やはり問題を解くというところに主眼を置いてしまうんです。例えば微積分を教えるときにでも、その物の見方やおもしろさ、楽しさを伝えることが大切なのですが、それを道具として利用して問題を解く、解ければよいというような授業になってしまいます。高校でも、本来はさらなる学びを追求していく基礎となるところを教えなければならないと考えますが、物の見方や面白さを伝えることができるような学びについて大学にも担っていただけたらと思います。長友大学に入学してくる最近の学生達が、昔の学生と違うところの一つは余計なことを知らないということです。しかし、良い教員の一つの条件として、子どもたちに話すことができる余計なことをどれだけ知っているかということがあります。子どもたちの立場から考えると、そういう余計な話は聞いていておもしろいですよね。吉田教育大に入ってくる学生は、センター試験を受けてくるので、一応全ての教科科目を学習しているでしょうけれども、センター試験の問題を解けるようにという視点が主になってしまう傾向があります。その視点から離れて、その背景や物の見方、おもしろさをもう一度学習するような機会を学生に与えたりするなど、小学校や中学校文系の先生に、例えば微積分を、受験を意識しなかったらもっと楽しいんだということを知ってもらうような機会があればいいなと思っています。問題を解くこと以上に、どのように学びの面白さを味わわせ、自分で考える力を身に付けさせていくのかを、高大接続の中で考えられると良いと思います。それにつながる話で、実は、小学校教員に、指導するにあたってどの教科の授業に悩んでいるか調査をしたところ、国語の指導方法について一番悩んでいるという小学校教員がたくさんいることがわかりました。初任者も悩んでいますし、採用後数年経過した若手教員や採用後10年の教員も悩んでいます。自分で考え3_AUTUMN 2014ならやま