ブックタイトルならやま2015夏号

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概要

ならやま2015夏号

クローズアップ本学教員の研究を詳しく紹介古典を読み継ぐ人間関係から読み解く『源氏物語』物語は作中人物のさまざまな人間関係を語ることによって形成されているという側面を持ちます。物語に語られている人間関係を分析することは、その物語がどのような構造を持っているのか、どのようなことを描こうとしているのか、といったことを明らかにする一つの方法となりうるものでしょう。私がおこなってきた研究の一つは、そのように作中人物の人間関係に注目することで、『源氏物語』のいわゆる「続編」の物語を読み解こうとするものです。ここでいう「続編」とは、「宇治十帖」(現存の『源氏物語』五十四帖の物語のうち、終わりの十帖)と一般に呼ばれる物語を主に指します。『源氏物語』の主人公としてひかるげんじ知られる光源氏の没後の世界を描いたもので、宇治を主な舞台とするかおる物語です。そこでは、薫(光源氏のにおうみや子)・匂宮(光源氏の孫)の恋やそれにまつわる女性たちの苦悩などが語られています。さて、人間関係には、親子関係、きょうだい関係、男女関係、友人関係、師弟関係等々、さまざまなものが存在しますが、それらの中でも私が特に注目してきたのは、親子きょうだい関係です。その一つの要因として、主な研究対象としてきた「宇治十帖」の主人公ともいうべき薫が、複雑な親子きょうだい関係を持つ人物であるということが挙げられます。先ほど薫について「光源氏の子」と記しましたが、実は、薫は光源氏のおんなさんみや正妻女三の宮と別の男性との間に生まれた子、すなわち不義密通の末に生まれた子であり、しかし世間的には光源氏の子として認識されている、という人物でした。薫自身、早くから自らの出生に疑いを抱いてお宇治川SUMMER 2015ならやま_10