ブックタイトルならやま2015夏号

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概要

ならやま2015夏号

クローズアップ『源氏物語続編の人間関係付物語文学教材試論』(新典社、2014年)かしわぎり、実の父が柏木という人物(薫が生まれて間もなく没)であることを物語の途中ではっきりと知ることにもなります。物語は、そのような出生の秘密を抱え、家族的な存在のいずれとも複雑な関係にある薫の姿を映し出しつつ、それゆえの薫と人々との特異な交わりを描き出していきます。およそ千年も前につくられたとされる『源氏物語』ですが、その複雑な物語世界は、いまなお人々の新しい解釈、多様な解釈を許容し(あるいは容易には読み解きえないものとして横たわり)、現代に生きる私たちの心をもとらえて離しません。読み継がれてきた『源氏物語』さて、いま、“およそ千年も前につくられたとされる『源氏物語』が、現代に生きる私たちの心をもとらえて離さない”ということを述べましたが、『源氏物語』の読者は、勿論、成立当時の人々や現代の私たちだけではありません。平安時代に成立したとされる『源氏物語』は、以後、鎌倉時代や室町時代、江戸時代といった、各時代の人々によってそれぞれに享受されてきたものなのです。こげつしょう例えば、写真の『湖月抄』という書きぎん物は、江戸時代に北村季吟という人物によって著された、『源氏物語』の注釈書です(1673年成立)。自説ださいりゅうしょうけでなく、『細流抄』(1510~1514もうしんしょう年成立)、『孟津抄』(1575年成立)とかかいしょういった書を中心に、『河海抄』(1362かちょうよせい~1368年成立)、『花鳥余情』(1472年成立)等の古注釈書の説を取捨選プロフィール国語教育講座ありま准教授有馬よしたか義貴専門は、平安時代の文学(特に『源氏物語』などの物語文学)、古典教育。早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得退学(2011)博士(学術)(早稲田大学2013)早稲田大学助手、湘北短期大学・聖学院大学・法政大学・立教大学・早稲田大学等の非常勤講師を経て、2014年より現職。日本文学協会委員など。11_SUMMER 2015ならやま