ブックタイトルならやま2016春号

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概要

ならやま2016春号

クローズアップきょうだい間の遊び(図3)おもちゃで遊んでいる姉妹れは、Motionese(Brand et al.,2002)やマルチモーダルマザリーズ(Gogate et al., 2000)と呼ばれています。このように、大人は赤ちゃんとかかわる際、言葉とジェスチャーとを同期させることが多く、新しい言葉と意味の関係を際立たせるようにしています。これらの特徴が、赤ちゃんの注意をひきつけます。また、養育者が、事物や行為、事物の特徴にラベリングづけをおこなうことで、子どものことばの獲得を促進していくと考えられています。また、生まれて間もない赤ちゃんの視力はほとんどみえていないことがわかっています。しかし、聴覚は、妊娠7か月頃には完成し、胎児期から母親の心臓や腸の音、母親の声や外の環境音を聞いていることがわかっています。そのため、幼い子どもは、視覚情報よりも聴覚情報に敏感であると考えられています。3歳児と1歳児の子どもをもつお母さんと会話した時のエピソードです。弟の世話や家事に追われるお母さん。お兄ちゃんは、お母さんの(図4)泣いている弟をみつめる兄注意を引くために、一人でできることをやらなかったり、ぐずぐず言ったりするそうです。ついお母さんも「早くしなさい」「一人でできるでしょ」と強く言ってしまう。声のトーンは低く、怖い声。そんな時、お兄ちゃんは、「お母さんキライ」とすねてぐずぐず。最後には泣いてしまうそうです。そんな様子をみて、お母さんはさらにいらいらしてしまうといいます。お母さんに、マザリーズや育児語のお話をしました。すると後日、そのお母さんから連絡がありました。『同じ内容までも、声のトーンや間を変えて言うと、子どもの反応が違いました。いつもは険悪な雰囲気になるのに、笑いが起こって、いらいらしませんでした。』とのことでした。幼い子どもとかかわる際に、声調に注目することは、やはり効果がありそうです。マザリーズは、赤ちゃんと楽しい快の状態を共有している時にみられる語りかけです。マザリーズを発声している時、私たちは自然と笑顔になっています。また赤ちゃんも笑顔です。先ほどのお母さんも声のトーンや間を変えることで、笑顔がうまれ、笑いが起きたのかもしれません。私はこれまで、大学生や高校生、小学生が赤ちゃんとどのようにかかわっているのかを研究してきました(中川・松村, 2004;2006;2007;2010)。その中でわかってきたことの1つは、これまで赤ちゃんとかかわったことがない人は、赤ちゃんに向けて、ほとんど発話を行わないということでした。どうしたらいいのかわからない。何を話したらいいのかわからない。赤ちゃんが好きでかかわりたいと思っていてもその方法がわからず躊躇してしまう姿をみてきました。また、保育士を目指す学生へのアンケート調査の中でも赤ちゃんへのかかわり方に不安を感じている学生が多いこともわかりました(中川, 2010)。これまでの研究は母親など養育者を対象としたものが多く、きょうだいを対象とした研究は多くはないことから、次に、きょうだい間の様子を観察することにしました。乳児と年齢が近く、毎日一緒に過ごしているきょうだいの遊び方は、赤ちゃんへのかかわり方に不安をかかえる人のヒントになるかもしれないと考えました。まだ、数例の事例ではありますが、年上きょうだいは、ことばを話せない乳児きょうだいに対して、名前を呼んだり、発話と行動を伴ったやりとりを行っていることがわかりました(中川, 2012他)。その中には、乳児の動作や自分自身の動作に擬音語擬態語をつけるだけで遊びが成立していることもありました。例えば、ボールを転がしながら「コロ」「コロコロコロー」と言うなど、声のトーンを変えなが11_SPRING 2016ならやま