ブックタイトルならやま2016夏号

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概要

ならやま2016夏号

クローズアップ本学教員の研究を詳しく紹介絵画が生まれる現場で考えるかの美術教育講座准教授狩野ひろあき宏明何をどのように描くか私の専門分野は、絵画制作に関わる理論と実践の研究です。私の研究室は、常に制作途中の絵であふれています。日々、自身の作品を制作しながら、絵画が生まれる現場で美術教育について考え続けています。古来、人間は様々な主題と形式の絵画を生み出してきました。現代においては絵を描く際に、何をどのような手法で表すかについて、制作者は自由に考え決定することができます。これはとても幸福なことであると言えますが、自分はいったい何に問題意識を持ち、何を伝えたいのか、そしてそれを伝えるためにはどのような方法が有効であるのかを深く考察する必要があります。このような絵画制作の過程は、個人の制作者のみに関わる問題ではなく、教育の現場において課題を自ら見出し探究し続ける力に結びつくものであると考えます。制作風景世界を観察する力私は、身の回りに存在するものや風景を注意深く観察するという行為が、絵の主題を決定する上で重要な役割を果たすと考えています。なぜなら、私たちを取り巻く環境にあふれる様々なものや風景にあらためて注目してみると、それらの中に、人が作り上げてきた制度や歴史、さらには物語や神話などにも結びつく世界の構造が内在していることに気付かされることがあり、それらが絵画の主題を見出すための鍵となると思われるからです。自身が暮らしている土地をよく観察することや新しい土地を旅行する経験は、その土地ではありふれているけれど他の土地では見られない特有のものや風景を発見することを可能にします。またそれらの発見は、特に美的価値を持ったものとして注目されることが少ないものや風景に対しても、それまで気付かなかった魅力を感じることにもつながります。作品紹介≪記憶のジオラマ≫次ページの写真は、私が制作した油絵の画像です。タイトルは≪記憶のジオラマ≫と言い、サイズは182.0×520.0cmで2015年に制作しました。この絵は、具体的に目に見えるものを描いた、いわゆる具象的な絵画ですが、現実の世界とはどこか違った奇妙な風景です。この光景は、私が現実世界で実際に目にした様々なものや風景を組みSUMMER 2016ならやま_10