ブックタイトルならやま2016夏号

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概要

ならやま2016夏号

クローズアップ狩野宏明≪記憶のジオラマ≫油彩、綿布、パネル、182.0×520.0cm、2015年合わせることで生み出されました。この作品を制作するにあたり、私はアメリカのワシントンDCにある国立航空宇宙博物館に展示されている火星探査機や宇宙船の部品などを取材しました。これらのモチーフは、人間が未開の地を調査し、世界の不思議をより深く理解しようと努めてきた歴史を象徴するものです。またこの絵の中で、これらの機械の周りには奈良の地で取材した風景が広がっています。古代の遺跡が多く残された飛鳥の風景や、平城京の再現模型、生駒の山上遊園地そして奈良教育大学の構内などをもとに、巨大なジオラマのような光景を描きました。宇宙探査機や奈良の風景が混在する≪記憶のジオラマ≫は、奈良をはじめとして世界を観察しながら絵を描いている自分自身の制作活動そのものを視覚化することを試みた作品です。作品制作の現場で学ぶ奈良教育大学の絵画研究室(狩野研究室)では、学生一人一人が個人で研究や作品制作を行うだけでなく、附属学校園や地域と連携したワークショップやアートプロジェクトを通して、美術教育に関わる総合的な実践を学んでいます。2015年には近鉄奈良線「学園前駅」地域において、新たなアートプロジェクト「学園前アートウィーク2015」が開催され、本学絵画研究室ゼミ生は、帝塚山大学、東北芸術工科大学と協力して作品の共同制作を行いました。そして狩野作品と三瀬夏之介氏(画家/東北芸術工科大学教授)の作品とともに大和文華館文華ホールで作品を展示しました。学生たちは地域、大学、アーティストと連携しながら、学園前地域のフィールドワークをもとにした作品の構想、制作、展示を共同で行いました。この活動を通して、ある地域についてのフィールドワークは、その土地への興味、関心を生み、特有性の理解へとつながると同時に、別の地域について考察する際にも応用可能な広い視野と想像力の獲得にも結び付くことが感じられました。また他領域の学生同士の交流やアーティストとの連携は、多様な専門的知識・技能や価値観を学び合い、次世代教員として必要な柔軟な思考力を身につけることにつながったと考えられます。世界観を更新し続ける絵画を含め美術作品は、個人的な感情や想いだけでなく、それらを形成する要因となる社会や歴史、11_SUMMER 2016ならやま