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概要

ならやま2016秋号

クローズアップの全国平均で8.6分です。平成16年は6.4分でした。1分1秒を争う救命活動において、10年で2.2分「も」増加しています。この原因のひとつが救急呼び出し件数の増加にあると考えられ、同じ10年で救急出場件数は約100万件増加しています。この状況に対応するためには、「奈良県救急安心センター(ダイヤル#7119)」の活用などの適正な救急車の利用とともに、一方で救急システムの運営の工夫も求められます。この工夫のひとつに適正な管区の設定があります。管区とはどこで救急呼び出しが発生したらどこの救急車が対応するのかを規定するものです。この管区の改善により現場到着時間を短縮できるかもしれません。実際には、様々な要素を考慮する必要がありますが、問題解決においてまずは単純化した問題を考えます。そこで、図1では、基礎的な分析として使うことができる、最も近い消防署はどこかを考えてもらいました。図2がその答えになります。このような図をボロノイ図といいます。ボロノイ図は生物学、画像認識、ロボット制御など様々な分野で用いられており、次のように求めることができます。各消防署(ボロノイ図では母点といいます)を結んだ線分の垂直二等分線を対象領域の端まで引きます。次に、それらの交点で分割されるそれぞれの線分について、境界線となり得るかどうかを調べます。図2では消えていますが、例えば、AとBの消防署の垂直二等分線の消えている部分は、AやBよりもCに近いことから、最も近い領域を表す境界線として使えません。消防署が3つであれば、このような手作業でも可能ですが、消防署が増えた場合には、とても手で計算することはできません(4つ、5つの場合を考えてみてください)。もっと効率の良い計算方法とコンピューターを使います(参考文献1)。都市におけるサービスを評価する上で、「近さ」は重要な規準となります。近いとうれしいものには、救急車や病院、保育園などの公共サービス、コンビニや商店、薬局などの商業施設も挙げられるでしょう。また、近くない方が望ましい施設もあるでしょう。このボロノイ図は、中学校数学でも作図できる非常に単純な図ですが、都市における配置の基礎的な評価を考える上で有用な道具となります。図3は奈良市の地図の上に奈良市の51保育施設(赤丸)を母点とするボロノイ図を、コンピュータで計算し描いたものです。消防署A消防署C消防署B図2 3つの点を母点とするボロノイ図(図1の答え)図3奈良市の51の保育施設(赤丸)を母点とするボロノイ図(青丸は奈良教育大学と附属中学校です)実際の問題解決のために実際の問題を考える上では、その特徴に合わせて様々な要素を考慮する必要があります。例えば、人口は一様には分布していませんし、町丁目などの行政界も考慮する必要があります。1番近い救急車が不在の場合には2番目に近い救急車が必要になります。また、保育園の例などでは、自宅から近いことよりも、通勤経路から近いことが評価されるかもしれません。さらに、都市の問題を考える上で重要な要素のひとつに道路網を考慮することが挙げられます。都市において、道路や線路、水道などのインフラなど、ネットワーク構造を持つものが多くあり、また、様々なイベントがそのネットワーク上で発生します。例えば、交通事故やひったくりなどの発生状況分析は道路網上で考える必要があるでしょう。道路網で「近さ」を考えるためには、最短となる経路を求める必要があります。平面とは異なり、道路の場合には、どの道を通ると最も短い距離(時間)で移動できる11_AUTUMN 2016ならやま