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概要

ならやま2017春号

学生が地域について学ぶ場としてもお世話になってきました。空き家をお借りし、そこを拠点に四季それぞれに合宿を行いました。その後、前の大学の卒業生が2人移住し、地域の方々のお世話になりながら、自然学校の職員や地域おこし協力隊員として精力的に動いているのはうれしいことです。奈良教育大学でも、小代にお邪魔する「フィールドワークで地域に学ぶ」という教養科目を設けました。人数制限がありますが、興味のある学生はぜひ履修してください。小代にて。前の大学のゼミ生たちと地域多様性を生かした未来づくり日本は今、国全体の人口が急減・高齢化するという、過去に経験のないステージに入っています。そんな中、明治以降の「近代化」や、高度経済成長期、バブル絶頂期の感覚のまま物事にあたるのは、明らかに間違っています。地域はどうでしょう?この文章で触れてきた日本の農山村は、人口の減少や高齢化の先進地域。最近、私がよくお邪魔している奈良県南部もそうです。それらの地域は、もう終わりなのでしょうか?価値のない空間でしょうか?私は違うと思います。現に、こうした地域を選び取って都会から引っ越し、暮らす人がいます。「仕方なく」ではなく、そこが好きでUターンする田舎生まれの若者もいます。そこでは、人の多く暮らす都市部とはまた違った未来が創り出されつつあります。大事なのは、深く掘り下げる「根っこ」のような地域をどこかに持ち、地域を見る目や社会と関わる能力を磨くこと。そして、地域と地域をいろいろな場面でつないでいくこと。この2つが地域の「持続可能性」を大きくします。それを実現するには、どの地域でも共感を大事にしながら「暮らし甲斐」と「関わり甲斐」をつくっていくことです。今回は主に農山村地域をとりあげましたが、ならまちに代表される歴史ある中心市街地や、大都会の下町やニュータウン、さまざまな民族の混在する地域、漁村、海辺のリゾート地、鉱山集落、伝統工芸品の産地、さらにはいわゆる被差別部落でも、それぞれの未来を創り出せるはず。「地域と地球をえーとこにしょーでー(ESD)」の取り組みを、これをお読みのみなさまと一緒に進めていきたいです。プロフィール社会科教育講座こうもと准教授河だい本大ち地専門は地理学、農山村地域研究、観光・地域づくり、ESD。地域の多様性を活かして社会の未来を創るための実践的研究に取り組んでいます。広島大学にて2007年に博士(文学)を取得。神戸夙川学院大学観光文化学部の講師・准教授を経て、2015年より現職。SPRING 2017ならやま_12