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概要

ならやま2017夏号

クローズアップきるピークフローを指標とし、節約して貯めたお金でピークフローメーターを購入しました。論文をたくさん読み、調査に必要なことを入念に整えました。そして、喘息体質を有する方10名、喘息体質が無い方10名を募集し、春夏秋冬それぞれの季節に1回ずつ登山(標高851 mの山)をしていただくことにしました。ここまで準備するのに、1年かかりました。大学4年生の春から一年間、山でピークフローを測定し続けました。この研究によって、寒冷環境の冬季や温度差が大きい春季・秋季に低山登山する際、最初の上り(約50分歩行として)後の休憩時に喘息体質を有する者のピークフロー値が安静時(登山前)に比べ有意に低下すること、気温や相対湿度が高い夏の登山時はほとんど低下しないこと、また、喘息の既往歴を有する者でも喘息患者と同様でピークフロー値は顕著に低下することが示され、計3編の論文を世に公表しました(髙木ほか2010等)。その後、修士課程(広島大学大学院)・博士課程(川崎医療福祉大学大学院)在学時、さらに現在にかけて、登山だけでなく水泳、サッカー、バスケットボール、長距離走実施時に調査を行っています。臨床で用いられるスパイロメーターによって肺機能に関する詳細な情報を収集し、喘息体質を有する方々が安全に運動できるよう予防策を提案しています(Takagi Y.2013,髙木・小野寺2017等)。喘息の研究からつながったスポーツ栄養学研究視点で登山をする中、様々なことに気がつきました。登山ではウエアや運動時間等に関係し発汗量が多いこと、それに関連する水分摂取の量や飲料水の種類は登山者によって違うこと、塩味の食物を求めること、等々。そうした気づきをヒントに試しの調査を行うと、想定外の結果が得られました。これが、スポーツ栄養学に関する研究を始めたきっかけです。特に、食習慣に影響を与える「味覚」に注目しています。例えば、発汗量の多い運動後は、塩味の閾値が低下し、微量の塩分の摂取でも「塩気」を感じます。一方、アスリートでは発汗量の増加に伴う亜鉛の排泄量の増加が度々起き、味覚が変化し、練習後に味の濃いものを欲しがることが示唆されています。このことは、塩分や糖分の過剰摂取、肥満の原因になります。味覚が体液バランスを整えるための新しいシグナルになることを期待し、現在は食欲との関連性も踏まえた研究を進めています。2016年3月から、本学女子バスケットボール部にてコンディショニングコーチを務め、食事や栄養に関する指導を行っています。月に2回、練習後に私の研究室に集まり、栄養バランスが整った食事を行い、栄養と体のケアを学ぶ「食事トレーニング(通称「食トレ」)」を実施しています。練習後の素早いエネルギー補給、また、不足しがちなカルシウムや鉄分の摂取、そして帰宅時に習慣化している間食(お菓子)を抑えること等を目標にしています。女子バスケットボール部の食トレ「食事中の会話は特に楽しい」11_SUMMER 2017ならやま