ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

ならやま2017夏号

N羅針W盤E奈良教育大学の取り組みSESDを学ぼうなかざわしずお次世代教員養成センター准教授中澤静男1はじめに「奈良教育大学は、日本で最初にユネスコスクールへの加盟が認められた大学です」という言葉は、本学の学生は入学式などで何度か耳にされたと思います。ユネスコスクールは、ユネスコ精神を実現する学校として、世界に約1万校、日本には約1,000校あります。そして、特に文部科学省ではユネスコスクールを学校現場でのESDの推進役と位置づけています。そういうわけで、ユネスコスクールである奈良教育大学では、ESDを特色ある教育活動の一つとして位置づけ、取り組んでいます。2 ESDについてESDとはEducation for Sustainable Developmentの略で、持続可能な社会づくりの担い手を育成することを目標とした教育です。持続可能な社会づくりの担い手には、まず、社会環境や自然環境、人々の行動などにおいて持続可能性の観点から見た場合に問題があるものを見出す「視点」が求められます。これを「ESDの視点」あるいは「ESDメガネ」と呼んでいます。ESDの視点は大きく2つに分類されます。自然環境や社会環境を対象とした場合には、「多様性」「相互性」「循環性」といった視点で臨みます。人や集団の行動や意思決定を対象とした場合は、「公平性」「連携性」「責任性」といった視点で検討します。つまり「ESDの視点」は問題発見のツールです。次に見出した問題の解決を目指して協働的問題解決学習を展開していくのですが、その際、教員には、ESDで育てたい能力である「クリティカルシンキング」「システムズシンキング」「長期的思考力」「コミュニケーション力」「協働的行動力」などを児童生徒が獲得できるように、学習環境を構築する役割があります。そしてESDで育成する価値観の基礎である「世代間・世代内の公正」「環境への配慮」「互いの人権・文化の尊重」の観点から、問題の解決策を検討し、発信したり、自分たちで取り組んだりと、考えたり理解したりするだけでなく、「行動化」までを学習過程に位置づけるところにESDのひとつの特色があります。それはESDが価値観と行動の変革を目指す教育だからです。3本学のESDの特色1.歴史文化遺産を通したESD私たちが暮らす現代社会は、偶然できあがったものではありません。先人の「少しでも暮らしをよくしたい」という努力と苦労によって形づくられたものです。それを私たちはさらによいものにして次の世代に伝えていく役割があります。その先人の苦労や努力といった営みを知ることが、社会の一員としての当事者意識を養うことにもつながります。そして先人の「声」を聞く手がかりとなるのが、歴史文化遺産です。明治21年6月5日に奈良町の淨教寺で「奈良の諸君に告ぐ!」という演説を行ったフェノロサは、講演の中で「奈良は東洋のローマ」であると述べましたが、奈良はまさに歴史文化遺7_SUMMER 2017ならやまESD実践交流会学ぶ喜び・ESD連続公開講座ESD連続セミナー