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概要

ならやま2017秋号

クローズアップ本学教員の研究を詳しく紹介明治時代の絵画教育にせまるたけうち美術教育講座准教授竹しんぺい内晋平私の専門分野は美術教育です。常にいくつかの関心あるテーマをもち、同時に複数の研究を進めています。その一つが美術教育史についての研究です。具体的には、「絵を描くこと」に関する教育の歴史について調査・研究しています。美術教育史を研究していて興味深いと思うことに、「絵を描くこと」を学ぶ方法は時代によって違いがあるということです。今回は、明治時代に行われていた絵画教育について紹介しましょう。明治時代に展開した毛筆画の教育日本で近代的な学校制度がはじまった明治時代、「図画」も普通教育の教科として指導されていました。当時は、西洋の絵画技法をまねた鉛筆画教育と日本の伝統を生かした毛筆画教育が混在していました。それぞれに教育的な意義はあったのですが、明治中期になると特に女学校において毛筆画教育が盛んに行われるようになります。どうやら、上流階級の女子教育において四季の花鳥等を筆で描く技量をもつことは、茶道や華道、和歌などとならんで文化的な嗜みの一つと考えられていたようです。そんな女学校などで使われた図画教科書を集めて調査することは、私の研究では重要な作業となります。この時代の「絵を描くこと」を学習する方法は、図画教科書をお手本にして臨写することが中心でした。ですから、当時の教科書を開いてみると、ところどころに墨や絵の具の汚れがついています。女学明治時代に刊行された図画教科書群生がお手本に向き合って学んだ奮闘の跡なのでしょう。当時の図画教科書は、画家が描いた原図をもとにして手仕事で多色木版印刷・製本された、大変貴重なものでした。図画教科書と絵画作品のモチーフがそっくり近年、私が研究対象にしているのは京都府内の女学校で使用された図画教科書と、その教科書を使用AUTUMN 2017ならやま_10