ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

ならやま2017秋号

特集奈良教育大学の「小学校英語」に関する取り組みについて英語教育講座専任講師ファーガソン・ピーター・アンドリュー世界ではバイリンガルを育てる教育に強い焦点が当てられています。長年にわたり、バイリンガルになることは、特に子どもにとって難しすぎるという印象がありました。しかし、最近のリサーチでは、第二言語や外国語がどのようにして学ばれるのかが新たに注目されてきています。そしてこの研究は、子どもには実際に認知能力の発達や記憶力向上、創造的な思考力の発達などの利点があることを示しています。また、外国語を学んでいる子どもは、コミュニケーションをより意識し、それに対して敏感であり、聞き手の必要性を感じとって、どちらの言語を使うのかを考えます。このようなことが、子どもが外国語を学ぶことへの建設的な見解へつながってきています。この動きは多くの国々で見られ、日本も例外ではありません。2020年4月に英語は小学校で正式に教科となり、3年生・4年生では英語活動、5年生・6年生では教科としての英語を学ぶことになります。小学校課程における外国語としての英語は、小学生にとって第二言語を学ぶ機会であるのと同時に、英語のコミュニケーションを教えることになる小学校の先生が直面する困難な課題でもあります。この特集では、小学校英語の概要と、奈良教育大学の小学校英語に関する取り組みを紹介します。小学校英語の概要小学校英語の3つの柱小学校英語には3つの柱があると考えています。123積極的なコミュニケーション自分の思いに興味・関心を持つお互いに学び合う小学校英語活動の授業第1の柱は、古典的な4技能(話す・聞く・書く・読む)ではなく、コミュニケーションに重きを置いています。これは、低年齢の学習者が、抽象的な文法のルールなどの理解に苦しむことなどから重要です。小学生は英語を学び始めたばかりで、限られた語彙しか持ち合わせていなくても、積極的に英語でコミュニケーションを図ろうとします。英語は、小学生にとって、コミュニケーション方法の一つに過ぎません。第2の柱は、小学生の興味を授業に組み込むことです。低年齢の学習者は、日々の生活で見た物の名前を学びたがります。例えば、ほとんどの小学生は動物が好きで、伝統的な英語の教科書の多くは、イヌやネコ、クマ、ゾウ、シマウマなど動物の名前を教えています。もちろんこれらの言葉もよいのですが、小学生は、日頃触れることの多いカマキリやホタル、てんとう虫、トンボなど、昆虫の名前も学びたいものです。小学生は、以降約10年は英語を学んでいくことになりますので、受け身の学習者ではなく、能動的な学習者になるためにも、こういった日頃触れる、日常のコミュニケーションに使うことができる語彙を授業に取り入れることが大切です。第3の柱には様々な意味が含まれており、学校の授業での学びだけではなく、小学生が先生やALT(外国語指導助手)、地域のボランティア、学校外で英語を学んでいる同級生などから学ぶということも含まれています。これらの3つの柱は、小学生のためだけのものではなく、小学校の先生のためのものでもあります。もし、小学校の先生が授業を行うときに、これらの3つ柱を取り入れることができていれば、効果的に英語を教えることができます。AUTUMN 2017ならやま_2