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概要

ならやま2017秋号

特集奈良教育大学の「小学校英語」に関する取り組みについて小学校英語活動の授業小学校英語の課題小学校英語の内容自体はそれほど難解なものではありません。主な焦点は、自己表現力という言葉に要約されます。小学生はコミュニケーションにおいて英語を使い、自分のことや周りのことを話すことができるようになります。他人や場所、物事について説明するわけではなく、「何の食べ物が好き?」、「ペット飼ってる?」、「野球は好き?」などの単純な質問の尋ね方と答え方、そして会話で使えるフレーズなどを学んでいきます。英語学習から何年も離れていた現場の先生にとって、これらのコミュニケーションのためのフレーズを復習したり学びなおしたりすることは、自分自身が英語を学習してきた過程でコミュニケーションの授業をあまり受けていないこともあり、大きな課題の一つです。先生がかつて中学校や高校の英語教育で学んできた内容と小学校での英語の教え方は異なります。私が小学校の先生と一緒に学校現場で働いていて感じた課題がいくつかあります。一つは、先生自身が英語を学んできた方法と同じ方法で教えたいと思ってしまうことです。先生が中学校以降で学んできた英語の教え方と、これから小学校で小学生が学ぶ英語の学び方が違うことを認識する必要があります。小学校での英語教育は、文法ではなくコミュニケーションに焦点を当てているからです。現場の先生にとっては、どのような言葉が必要で、どの表現を教えればよいのかがわかっていないということです。そして、いざ英語の授業をしようと思っても、どんなに元気な先生でも、本当に自分の教えている英語は正しいのかという自信が持てなくなります。そして、やはり自分の発音は大丈夫か、変な発音になっていないか、子どもに悪い影響があるのではないか、子どもの事を考えるともっと綺麗な発音で話せる人の方がよいのではないかという気持ちになります。まずは、先生が教える内容を把握し、どのような言葉が必要で、どの表現を教えればよいのかを学ぶ必要があります。ALTと一緒に楽しいゲームなどをするだけではなく、やはり担任の先生が頑張っている姿を見せることが大切だと考えています。その姿を見て、仮に上手でなくても、英語を使ってコミュニケーションを取ろうという姿を見せることで、「先生は英語ペラペラじゃなくても頑張っている。私も頑張ろう」となるのではと思います。しかし、この担任の先生の頑張りというものが、現場の先生にとって難しいことです。一つ、実際にあった事例を紹介します。ある小学校の先生が私の大学の授業を受けに来ました。経験豊富な立派な先生で、すごく面白い理科の実験を大学生に見せるなど、いろいろと大学生にアドバイスをしていました。ある日、その先生の小学校に行き、英語の授業を見学することになりました。先生が教室に入って来て「Hello. Good morning.」と授業を始めました。低学年の授業でした。ところが、先生は1学期の暑い教室にも関わらず、厚いプラスチックのウルトラマンの面をかぶって授業をしていました。授業後、「なぜ面をかぶって授業をしているの?」と聞くと、先生から驚きの回答がありました。「子どもの前に立って英語を話すのが恥ずかしい。」このような立派で経験豊富な先生でも、英語を教えるということが恥ずかしいということであれば、誰でも恥ずかしいのだなと思いました。私は、「上手下手は関係ないですよ。頑張っている姿を見せることが大切です」とアドバイスしました。2学期になり、もう一度その先生の授業を見学に行きました。厚いウルトラマンの面が薄いスパイダーマンの面になっていました。「まだ少し恥ずかしい」というその先生を見て、現場の先生にとって時間がかかる問題であるのだなと私にとっても勉強になりました。3_AUTUMN 2017ならやま