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概要

ならやま 2018秋

3.居場所「ねいらく」での子どもたちの様子1関係性と可能性感のひろがり……自尊感情の高まりイラストやマンガが得意な子、ゲームに詳しい子、楽器を弾くことに関心のある子、身体を動かすことなどいろんな活動をしてみようと思っている子、勉強を中心に考えている子など、様々です。子どもたちは、最初、大学生やカウンセラーと一対一の関係作りをしながら、「しずかスペース」や「まったりスペース」で、別々に過ごしていますが、徐々にボードゲームをしたり、関心のあるネットゲームなどの話題から話をしたりするようになり、関係性が動き出します。また、小学生のことを中学生が気に掛けたりして、お姉ちゃん、お兄ちゃん的な役割をし始めることもあります。こうした異年齢の関係性も大切です。このような、他者から受容され、認められるという経験や、他者に働きかける経験を通して、ポジティブな自己認知が形成され、徐々に自分自身の可能性感、つまり何かに取り組もうとする感覚が芽生えてくるといえます。これは、自尊感情の高まりと関係しており、実際に学校に行くようになったり、友だちと何かを始めるようになったりしています。それをゆっくり見守れるかどうかが重要です。2居場所の重要性居場所「ねいらく」には、3部屋(しずかスペース、まったりスペース、集団活動スペース)があると述べましたが、前述1の展開と共通する部分があります。(下図)自分のそのままが受け止められる感覚(しずかスペース)他者との対話の中での関係づくり(まったりスペース)協働性の構築(集団活動スペース)居場所での関係性のつむぎ直し、そして自己実現と社会との関わりを模索する段階への移行の際に、居場所での対話が大きな役割を果たします。その際には、基本的な安心感、信頼感をつくっていくことが大切です。活動ありきではなく、子どもたちが居場所で何をしようとするのか、したいのかという思いや気持ちを受け止めていくことが大切になってきます。まとめ以上から、この事業は、不登校など課題を抱える子ども一人ひとりの心身の育ちや学びを支えるための取り組みであるとともに、子どもを通して家庭の支援にもつながるものであるといえます。また、これに関わる学生ボランティアは、課題を持って苦戦している子ども達との関わりを体験することにより、画一的に物事を受け止めることが少なくなり、子ども達の自尊感情を如何に大切にするかについて学んでいると感じます。それとともに、教師としての自覚も芽生え、大きな学びを得ているといえます。日時場所毎週火曜日15時?17時30分※夏休み、冬休み、春休み期間中も開所(年末年始、お盆の時期を除く)大学構内の寧楽館(ねいらくかん)正門の守衛室の隣にあり、玄関には藤棚もある平屋の民家といった雰囲気の建物です。対象奈良市内を中心とする地域において、不登校などの課題を抱える小学校、中学校の児童・生徒を主な対象にしています。現在の来所者は、小学生4名、中学生4名、高校生1名ほどです。地域的には、奈良市を中心に大和郡山市、橿原市、遠くは愛知県からも来てくれています。ほぼ毎週来ている子もいれば、不定期に参加する子など、子どもの状況により多様です。9_AUTUMN 2018ならやま