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概要

ならやま 2018秋

クローズアップ微分方程式論の研究者を志す私が微分方程式と出会ったのは大学学部2回生の時です。その頃は、不勉強のせいもあり、微分方程式を、2次方程式などの数学にある方程式の一種であるという狭い捉え方をしていました。しかし、大学学部の卒業論文作成時に微分方程式を本格的に勉強し始めると、その捉え方は消えて、前述のとおり「様々な現象が微分方程式で記述できるのは面白い」と思い始め、いろいろ勉強していくうちに「微分方程式がわかってくるといろいろなものがみえてきそうだ」と考えるようになりました。この考えが次第に膨らんでいき、修士時代に微分方程式論の研究者を志しました。さて、ここまで数式が出てきていないため、次節以降では、いくつか数式を交えて話しを続けることにします。数学の問題のほとんどはきれいに解けない私たちは中学生の頃に2次方程式を学習します。図1の1にある方程式が2次方程式の一例で、それをみたす「数」xを求めなさい、という問題です。大学に進学すると微分方程式を学習することもあります。図1の2にある方程式が微分方程式の一例で、それをみたす「関数」x=x(t)を求めなさい、という問題です。1については、解の公式または因数分解による方法で解くことができます。2については、大学レベルの数学を用いると、簡単な計算によって解を求めることができます。1と2はどちらも解をきれいに求めることができます。それでは、図2の3、4はどうでしょうか?3は5次方程式ですが、きれいに解を求めることができません。実際、3を代数的に解くことが不可能であることを、ガロア理論を用いて証明することができます。4は単振り子の方程式です。楕円関数を用いてその解を表示することができますが、楕円関数は決して易しいものではありません。実際、その解表示を用いて解の値を求めたり、解のグラフを図示しようとするとき、コンピュータの力を必要とするでしょう。ここで主張したいことは、高校までに取り組む数学の問題の多くが特殊なものであるということです。実際、それらは式変形等の比較的簡単な操作できれいに解けるわけです。しかし、私たちの世界にあらわれる現象は、数学の枠組みにおいて3や4よりも遥かに複雑かつ難解であり、きれいに解くどころか、解を具体的に書き下すことさえ不可能です(例:三体問題、二重振り子など)。では、解を具体的に書き下すことができない問題をどのように解けばよいのでしょうか?この問いに対する解答は、大学数学や研究レベルの数学にあります(詳細は割愛します)。下:授業での様子11_AUTUMN 2018ならやま