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概要

ならやま 2018秋

奈教のひみつ“なっきょん’s CLUB”企画身近なシカの知られざる生態奈良教育大学構内にシカはいても良いのだろうか文責:自然環境教育センター特任教授とりい鳥居はるみ春己1構内で増えるシカ奈良というとシカと言われるほど奈良公園ではシカは普通に見られます。奈良公園にあれだけ棲息することは異常なことです。生態系に影響を及ぼさない密度は平方キロメートル当たりに2頭程度と言われていますが、奈良公園の平坦部では400頭を超えています。シカはオスメス別々に暮らすという習性があります。普段は近縁本学構内で見られるシカなメス同士での群れ生活ですが、交尾期になると成熟オスが群れに入り込み、オスは交尾期が終わると元に戻ります。奈良公園では多すぎてそれを感じるのは難しいでしょうが、構内では秋から初冬にだけ大きな角のシカが入り込んできますので、交尾期を実感して下さい。構内には20年くらい前に数頭のシカが入り込むようになってきて、少しずつ増え、今では20頭を超えています。毎年5?6頭程度が生まれますが、オスは2年ほどで母親から離れ、外へ出てしまうので、生まれた半分がメスだとすると年に3頭くらいずつ増えることになります。シカは早い個体は2歳で初産を迎え、毎年1頭ずつ出産するので、急激に個体数は増えます。野生と違ってのんびり暮らしている構内のシカは長命でしょうから、このまま放置すれば、いずれ50?60頭を超えるでしょう。ブラウジングラインシカが嫌ってできた群落2構内環境への影響シカは4つに分かれた胃を持ち、第1胃に棲息する微生物の助けによって餌植物を分解し、エネルギーとしている植物食の動物です。シバなど食べ続けられると草丈は数cmにまで低くなってしまいますが、シバは枯れることはなく生長してくるのでシカにとっては都合の良い餌植物です。また、後ろ足で立ち上がって、口が届く枝や葉を食べてしまうため、ほぼ2m以下の枝は無くなり、そんな状況はブラウジングラインと呼ばれます。奈良公園の飛火野などで見て下さい。そんなシカでも毒や棘などがあって食べない植物だけ目につくようになってきます。理科1号棟西の空き地のススキやレモンエゴマがそれで、対照的にシカの入れない吉備塚脇のフェンスの中は灌木林です。シカが環境に優しくない動物だということが理解いただけるでしょう。シカに食べ尽くされてしまい、構内ではネジバナ、シロツメクサなど多くの植物が絶滅したようです。食べられない小さいサイズで花を咲かせるムラサキサギゴケやニワゼキショウなどは生き残っています。フェンスの中は灌木林15_AUTUMN 2018ならやま