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概要

ならやま 2018秋

シカと生態系なんで日本だけ絶滅しないのだろう。シカの仲間は世界に30数種が棲息しています。日本にはもともとニホンジカ(以後はシカ)が棲息し、遺跡からはシカとイノシシの骨が大量に出土していますので、古代人の胃袋をシカが満たしていたのでしょう。シカはロシアから中国、ベトナム、台湾などに広く分布していました。しかし、近年は中国や台湾では野生個体は激減し、ベトナムでは絶滅とも言われています。日本には人が放した島も含め、薩南諸島から北海道まで広く分布しています。他に伊豆大島や千葉県にはキョンが野生化しています。シカもキョンも増え過ぎ、生態系の破壊や農業被害は膨大なものとなっています。実は奈良教育大学構内でもシカの影響は大きなものです。4増3ホタルがえ続けるナンキンハゼところで、ナンキンハゼはシカが食べない樹木で構内にも大木があります。鳥が食べて種子を運ぶので、構内の至る所で芽吹き、いずれはナンキンハゼだらけになるでしょう。附属小学校の畑の柵では伸びたナンキンハゼが金網を巻き込み、学外西の側溝の石垣からも枝を伸ばしています。そのうちに風で倒れれば、柵や石組みを崩す可能性がないとは言えません。消えた!?数年前までは捕虫網を持った子どももいました。でも、丈の高い草地が無くなったので虫取りもできません。構内でもホタルが飛んでいたことをご存じでしょうか。ホタルが飛んだ水路はシカの糞や踏みつけで荒らされたままです。草本類の草丈はシカに喰われるだけでなく、シカでも喰えないほど低く刈り払われ、落葉も廃棄されているので、落葉下の生物も消えました。雨後に這い出していたミミズも少なくなりましたし、子どもの好きなダンゴムシも見ることができません。シカと草刈りのおかげで、花も咲かない、蝶も飛ばない、虫も鳴かない沈黙の奈良教育大学です。消えた植物や動物は教材や子ども遊びで、まさに奈良教育大学の財産でした。シカは奈良教育大学の財産を喰って生きているとも言えるのです。垣根も大半は食べられ、マメツゲなどは無残な姿です。石垣に生えたナンキンハゼフェンスに絡まったナンキンハゼ構内に入り込み始めた頃は警戒心から、昼間はサークル共用棟の裏などに潜み、夜だけ姿を見せていましたが、次第に警戒しながら昼間も姿を見せ、最近は通学の小学生の前を平気で横切るようになっています。事故だけは防ぎたいものです。シカと人が仲良く暮らせたらいいね。AUTUMN 2018ならやま_16