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概要

ならやま 2018秋

特集学長対談×奈良国立博物館館長例えば、エネルギーの問題を勉強して、その知識が増えても、家に帰ってそれに基づいた行動がとられないならば、その人は学んだことにはならないということです。そういう学びに変化していっているのに、以前と同じように知識詰め込み中心でやっていっても、創造ということがなかなか出てきづらいように思えます。松本我々も知識詰め込み型でずっときたものですが。それはそれで無駄になっているとは思ってないのですが、ただそれに終止してしまうというのは、もったいないです。加藤バランスなのかもしれませんね。でも、感動して自分の感性を研ぎ澄ませて物事を見る力を持ってる人の方が、人生はハッピーだと思います。松本そうですね。私は博物館という狭い空間にいますが、世間一般を見ても、感動しない人が多くなって来てますね。加藤「感動」というのはすごく大切なキーワードだと思います。わー!!すごい!!」と言うことはあります。涙を流すようなこともあるかもしれない。けれども、どちらかというとそういった万人に共通するありきたりの感動ではなくて、「いま生きていることの感動」とか、あるいは「本当に芸術的な作品を見て魂が打ち震えるような感動」とか、そういう経験って意外と少なくなってきているような気がしてならないんです。加藤知識を得て理解して何かを見たり、友達と学び合い、対話型で学んでいくなかで、感動という、揺さぶられる心がないと、深い学びというものにはつながらないだろうという気がするんです。ですから、本学と奈良国立博物館の方とで協働で創った忍性※さんを題材とした授業作りを考えるにしても、「ええ?どういうことこれは?」「どうしてそんなことができたの?」というところで感動が生まれるようにしていくと、新しい学習指導要領が求めている「社会に自分がどういう役割を果たすのか」という学びに繋がっていくのだと思います。松本これも我々の世界に引き寄せた言い方になってしまうかもしれませんが、あらゆる面で文化芸術的な心、あるいはそれを味わう余裕、それが自然科学であろうと、人文だろうと、飛躍をもたらす源泉のような気がします。主体性が自然に備わる方向で、自分で感じるようになれば、それを元に想像力って自ずと比例して、膨らんでくるんだと思います。自分でとっかかりをみつけて次のステップに繋げる。「ああ、これはなんだ」と、「これは面白いね」と。そうすると新たなことを知ったとき全く別の感動が起こるかもしれない。でも、そこで飛躍していくために重要なのは、「大きな想像力」、これがやっぱり欠如しているような気がしてならないですね。特に若い世代の人たちには。ノーベル賞をとった本庶先生なんかもおっしゃっていましたけど、次の世代の人たちに想像力が足りないんじゃないかと、相当危機感を持ってらっしゃる。学問の枠を超えた、人としての心の躍動感、あるいはそこから生まれる想像力、そういうものを鍛えるには、作り出すには文化財には大きな松本本当の感動を知らないできているんじゃないかと。なんだか解らないけど「う※忍性:鎌倉時代の律宗の僧。道路・橋・救貧救病院の修造などの社会事業に尽力した。「生誕800年記念特別展忍性-救済に捧げた生涯-」が奈良国立博物館にて開催された(平成28年7月~9月)。その際には、奈良教育大学も協力した。5_AUTUMN 2018ならやま