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概要

ならやま 2018秋

学長対談×奈良国立博物館館長特集力が宿っていると思います。何千年に渡る人類の叡智が込められていますから、そこから引き出せるものにはとても大きなものがある。もっともっとなんとか文化財を活用してその良さ、価値、素晴らしさを伝えていきたいなと思います。加藤感動する力、積極的に文化財を見る力がある人と、そうでない人と、その違いはどこから来ているんでしょうか。松本家庭環境なり育ってきた環境なりが大きいんでしょうけど、刺激の与え方一つでも変わるような気がします。ちょっと話はそれるかもしれませんが、ネットあるいはデジタルで超高精細、8Kになると人間の目を超えるわけです。こんな大きな画面で肉眼では見えないところまで見えちゃいます。それなら実物を見るのは何なのかと、逆に問いが来るわけです。ネットで良いじゃないって。じゃあ重さは解る?質感は解る?そういうところの違いを体験する機会が意外に少ないもので、実感することがないんじゃないかと思います。実物を見ることによって、生の体験をする。高精細デジタルでも、インターネットでも決して味わえない、空気感まで。加藤私は博物館が大好きで、必ず、その地の博物館や美術館に行ってみることにしています。ワシントンDCに行ったらスミソニアン、ニューヨークに行ったらメトロポリタンに行ったり。分からないことも多いのだけれど、実物の前に立って見る、感じる、そういうことが大切なんだろうなと思います。松本日本の教育は、教える教育から入っちゃう傾向が強いですね。あるいは、何かを吸収してやろうという方向。そうではないんだよと、何も知らなくて良いんだよ。何かを感じてご覧なさい、というのが博物館なんです。美術館もそう。自分で何か問いを発してみなさいと。?一法人二大学について加藤奈良教育大学と奈良女子大学は、より一層の研究や教育の機能強化を考え、一法人複数大学でやっていくことを目指しています。また、奈良には奈良国立博物館、奈良文化財研究所や奈良先端科学技術大学院大学、奈良工業高等専門学校など特色をもった素晴らしい国の機関があり、それらがゆるやかな連携をして、学問の府である「奈良カレッジズ」をつくろうという構想で動きはじめています。これらの機関は、奈良にあることの意味をもって存在していると思います。本学で言えば奈良の地の教育を教員養成や研修の面で役割を果たすことです。地域創生にもつなげていくことも考えられます。このことについて、館長からもご同意いただいているわけですが、それらの機関での連携を具現化するためには、リベラルアーツということがキーワードになっています。そのあたりはいかがでしょうか。松本私にとってはリベラルアーツというのは新鮮に映っています。先程来申している延長線上なんですが、人間の本源的な部分につながっていると思います。人間養成、人間力それは精神であり、心であり…その部分を、奈良という地では、これから重点的にやっていけるのではと思うのです。古い歴史を持って、身近に文化財があって、すぐ接することができる。これは一番地の利を得たところだと思います。加藤それこそ世界遺産学習をした子どもの話ですが、東大寺さんも、興福寺さんも世界遺産かもしれないけど、もしかしたら家の近くにあるお寺も私から見たら世界遺産と同じようなものだ、と言った小学生がいたそうです。すばらしい学びだと思いましたね。この子が得たものは自分で自分の世界遺産を見つける力を、さっきで言う何かを見て感動する力を、そしてそれを言葉で表す力を、その子は持ってるんだと。それを学んだのだと思います。奈良は生活の目線の高さでいっぱいそういった文化遺産があると私は思っています。松本それを地元の人たちはあまり意識しませんね。最近では、奈良の地方の行政が段々声を上げるようになってきたところですが。単純な意味での比較をするつもりはないですが、京都のわかりやすさに比べて奈良はわかりにくいですね、普通に見ますと。奈良の良さって何って言われてもなかなかすぐには思い浮かばない。奈良に興味をもつのは、一部の考古学者だけ、お寺や歴史が好きな人だけ、あるいは飛鳥のひなびたいにしえの都の跡が好きな人とか、限られている。そういう意味では盛り上げがいがあるというか、観光ベースではなく、文化を基盤としたものができる土地柄というか。加藤そうですね。そういう特色を活かして、奈良の地ならではのもの。例えば、これまでにないリベラルアーツをベースにした工学部を創ろうということや、文化財と工学をミックスして、新しい発想のものが創れるのではないかということ。感動をベースとしたもの、新たな気づきを大切にして、自発的に学べ、想像力を膨らませていけるような、奈良の地ならではの特色のある教育大学にしていきたいです。教養教育のところをはじめとして、奈良国立博物館とは、密接な連携を進めていきたいと思っています。今後ともどうぞよろしくお願いします。本日は、ありがとうございました。AUTUMN 2018ならやま_6