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概要

ならやま 2020秋号

特集コロナ禍におけるオンライン授業の取組オンラインで合唱する今年の前期授業は新型コロナウイルス感染症対策のため、「合唱Ⅰ」では、マイクロソフトが提供しているグループウェア「Teams」を使用して、オンラインによる授業を行いました。「Teams」というのは、チーム内でのチャットやビデオ会議、ファイルやスケジュールの管理ができるツールです。授業の流れは、授業開始時間に「合唱Ⅰ」というチームのビデオ会議に入室し、出席を取った後、対面授業と同じように身体をほぐす体操、発声を行います。体を温めた後、5つのグループに分かれ、グループごとに曲についての理解、音楽の方向性等を話し合いながら練習をします。これが大まかな授業の流れになります。課題として、それぞれ練習した担当パートの録音音源を提出してもらい、こちらで音源を重ね合わせ、ひとつの音源に編集したものを次の授業内で発表し、さらに改善点をグループごとに話し合い、もう一度この作業を繰り返し、曲を完成させます。この方法で、グループごとに発表した曲に加え、最後は全員で奈良教育大学の学歌に挑戦しました。音楽教育講座准教授みずの水野科目名:合唱Ⅰあれき亜歴今回初めてオンラインでの授業を実施しましたが、対面授業でできていた細かいことに改めて気付かされました。対面では、履修者一人ひとりの表情や雰囲気などから疲れや健康状態を感じ、授業の進め方を調整することができましたが、オンラインでは全体を見渡すことができません。少しでも全体の雰囲気を把握するために、声を出して出席を取ったり、体操・発声の際にはビデオをオンにさせたりしましたが、一画面に9名しか表示されないので全体を見渡すには不十分でした。一番頭を悩ませたのは音の時差です。遠隔合奏が可能なサービスもありますが、パソコンの性能やネット通信速度によって遅延が発生してしまうので使用を断念し、個別に録音したものを編集してひとつにまとめる「リモート合唱」と呼ばれる方法で行うことにしました。対面合唱と違いリモート合唱では各自の音程やリズムがかなり正確でないと編集した時にズレが目立ってしまうため、一人ひとりが自分のパートに責任をもって正確さを意識し取り組むことができたように思います。また、曲全体のハーモニーや、自分のパートの役割などを想像して歌うことで、自分以外のパートや曲全体を「聴く」から「想像(イメージ)する」力がついたのではないかと感じます。そして何より印象深かったのは、オンラインでの練習方法について提示したものを土台に、より良い練習方法を学生たちで考え実践してくれたことです。このように、実技指導においてもオンラインの良い効果や新しい可能性を感じた反面、ネットの接続状況やパソコン、アプリの不具合に左右されうまく授業に参加できない、自宅では思いきり歌うことができない等の問題が明らかになりました。また、その場の空気や響き、息の流れやハーモニーを感じ合える対面にしかない良さも改めて感じています。オンラインで合唱する可能性を模索しつつ、今後の状況を見ながら対面授業への切り替えも視野に入れていきたいと思います。最後に、オンラインでの実施にあたり、受講生のご家族の方々には多大なご協力、ご配慮を頂いたことと存じます。この場をお借りして感謝申し上げます。5_AUTUMN 2020ならやま