ブックタイトルならやま 2021年春号

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概要

ならやま 2021年春号

クローズアップ+本学教員の研究と、研究室をそれぞれ紹介します。子どもたちの「こころ」を探るとみい特別支援教育研究センター富井な奈な菜み実専任講師「あなたは誰ですか?」「あなたは誰ですか?」。こんな問いを投げかけられたら、皆さんはどんなことを答えるでしょうか。「私は〇〇です」という回答形式で、少し考えてみてください。さて、皆さんはどんな回答を考えたでしょうか。これは「20答法」という心理テストの一種で、正確には「Who am I ?」、「私は誰?」と自分自身に問いかけ、20個の回答を考えてもらうもので、自分のことをどのように理解しているか(自己理解)をみるために用いられるものです。ここでは皆さんの回答を聞くことはできませんが…。「私はトミイナナミです」と名前を答えた人、「私は高校生です」と所属を答えた人、「私はラーメンが好きです」と好きなものを答えた人、などなど。様々な回答があると想像します。発達検査の様子では。次にこの質問を小学生に聞いたら子どもたちはどんなふうに答えると思いますか?こちらも是非、考えてみてください。またそれは皆さんが自身について回答したことと同じような回答になるのでしょうか。もしくは異なる回答がでてくるのでしょうか。いかがでしょうか。少し難しい質問だったかもしれません。おそらく皆さんは「人それぞれだしなぁ…」と悩んだのではないでしょうか。しかし一方で、「小学生らしい発想がありそうだな」とも考えたのではないでしょうか。お気づきだと思いますが、この「20答法」には「正解」はありません。皆さんの回答も小学生の回答も、その内容は人それぞれで、個人の特徴が現れます。自分自身のことですから他者と違って当然といえます。しかし、子どもたち(小学校1年生?6年生)の回答を分析してみると、それぞれの個性があふれでる一方で、学年(あるいは年齢)の特徴が現れてきます。その一部を紹介します。まず、子どもたちの回答の中に「私は人間です」、「私は人です」、「私は子どもです」というものがありました。この回答が学年ごとにどのくらいの割合で出現するかを分析したところ、1年生は3.6%、2年生は13.3%、3年生は0%、4年生は46.2%、5年生は2.7%、6年生は14.7%という結果が示されました。注目したいのは4年生で、他の学年に比べ顕著に出現割合が高く、約半数の子どもたちが自身のことを「人間」、「人」、「子ども」と説明しています(富井他(2019)「学童期における自己の構成の発達―20答法を用いた分析―」対人援助学会第11回大会)。SPRING 2021ならやま_10