ブックタイトルならやま2022年春号

ページ
5/24

このページは ならやま2022年春号 の電子ブックに掲載されている5ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

ならやま2022年春号

理事長・学長対談特集ことだらけなのよ」ということを知っている先生とで、子どもへのアプローチが違うんですよね。榊:そうなんです。疑問を抱き続ける子どもに対し「こんなに説明しているのにどうして分からないのか」と言った途端に、子どもの探究の芽を潰すおそれがあります。よく理解できない状況の子どもに対しても、温かくて、かつ深い対応ができる先生であってほしいですね。教師生活だからこそできる探求・探究を宮下:最近、学生はすごく、学校の先生という仕事に対してプレッシャーを感じているようです。それを裏返すとすぐ不安に変わるんですよね。3月31日まで学生だった、4月1日からもう教壇に立たなきゃならないと。何もそんなに鎧をまとわなくても、できないことはいくらでもあるし、未熟なところもいくらでもある。今はそれが、保護者の方にご指摘を受けたりする時代だから、むしろ逆に恐怖になってしまう。学生に対して「課題を探求して」という言葉をよく使いますが、課題を見つける、ということはなかなか難しいことなのかもしれません。自分はどういうところが未熟なのか、どうして失敗してしまったのか、そういったことに敏感になって原因を探し求めたり、課題を見つけに行ったりするということが少し弱いと思うのですね。はじめから、課題はこうなんですよ、解決するにはこういう方法がありますよ、という教育を受けてきた学生が最近は多いですね。放り出されて、何が問題なのか、課題なのかを探しなさい、という経験が重要で、そうした何らかの経験を、大学の学びの中や、学生生活の中でさせたいなと思っています。榊:私が選考委員をつとめていた東レ科学振興会では、理科教育賞として、中学や高校で、面白い教育素材を作った先生を表彰しているんです。その中のおひとりで、千葉県内にお住まいの高校の先生が、生徒たちとともに、試行錯誤を続け、約30年間の努力の結果、ニワトリの卵の命を損なうことなく、その殻を取り除き透明なプラスチックカップと成型したラップに置き換えることに成功されたんです。その結果、卵の中でひなが育ってくる様子を外から観察できるようになり、感動ものの映像が撮れるようになったんです。長い年月をかけて挙げた唯一の研究成果ですが、本当に感動しました。学校の先生は生徒に教えることが本業なので、研究大学の教員と違って、成果を次々とコンスタントに挙げる必要はなく、ひとつのテーマに没頭し、長期間にわたり継続できる強さを持っているんですね。研究面でも成果を挙げられた中学や高校の先生たちの話は、とても刺激に富んでおり、毎年楽しみにしていました。先生たちの探究の経験が、子どもたちにいい影響を与える例だと思います。加藤:教員養成をする大学の教員を育てる大学はないと思うのです。文学部でも、どの学部でも、教員養成をする人材を育ててはいない。そうすると、理学部、工学部、文学部、いろんな学部を出た方が、たまたま教員養成の大学に大学教員として就職し、そこで教員養成と初めて出会う方が多い。その方たちは、文学部にいた、理学部にいた、修士、博士でやってきた研究を、教員養成をする本学ですることになる。教員養成においても探究という意味で、その要素は捨ててはいけないと思います。先ほどの卵の殻の研究もそうですが、教師生活40年なら、その先生にしかできない探究型の生活があると思うのです。また教員生活においても、教員養成においても、教師として必要な要素は「探究」ではないでしょうか。榊:日頃から気にせずに使っている日本語にも、改めて考えてみたら、不思議なことがいっぱいありますよね。特に言葉や漢字の語源が気になると、疑問が次々と出てきますね。先日もお弁当のおかずが鰹でしたが、「鰹」はなぜ堅いという字を書くのか疑問になり調べてみました。どんな言葉でも、誰が作ったのだろう、とか、どの時代に生まれたのだろう、とかを考えるとSPRING 2022ならやま_4