ブックタイトルならやま2022年春号

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概要

ならやま2022年春号

特集理事長・学長対談疑問が生じてきて、ワクワクしますね。そうした疑問を共有すれば、子どもたちの心にも不思議に思うことがいっぱい出てくるはずなんです。学校の教員の方々には子どもたちと共に疑問を見つけたり、考えたりしてほしいですね。自ら学び、投げかけることができるように榊:私は、冒頭でも触れたように、学校の先生に対し、心からの感謝の気持ちを持っています。奈良教育大学の学生の皆さんも、そうした思いを持つ方が多く、それ故に教員になることを目指しているのではないかと思っています。ただし、現代社会の状況は大きく変化しています。例えば進学に関して、競争的な風土が非常に強くなっており、教育の見方にも影響が出ていますね。この結果、先生方も、親御さんや社会の価値観の影響を受けて、進学実績を優先して、自分が教育で一番大事だと思ってきたことも、二の次にせざるを得ないことも少なからずあると思うんですね。そうした現実社会への妥協は、どの職業でも避けがたいものですが、妥協や譲歩が行き過ぎると、いびつで、不健全な社会になってしまいますね。そうした妥協に対し、職場や学校が健全な疑問を持ち、ひずみを緩和できるかどうかが鍵になると思うんです。中でも、学校や教育現場での対応が、子どもたちにすごく影響すると思います。「おかしい」と感じることを、みんなで語り合って、直していければ、社会を変える力の源になると思います。まず、自分自身の心の声に耳を傾け、それをみんなで共有することができれば、社会には復元力や推進力が出てくるんだと思います。これまで、日本の学校の多くにおいて、そういう真剣な取り組みがなされてきたために、日本社会はきちんと機能してきたんだと思います。しかし近年は、価値観が多様化する中で、一番大事にすべきものを見落とす可能性も増しているので、注意が必要ですね。これは、教育現場だけじゃないんです。研究者に対する業績評価にも、歪んだ見方が入り込んできています。また、企業の経営判断においても、優先すべき順位は、社会全体なのか、従業員なのか、株主への配当なのか、度々問題になっていますね。そうした判断は、社会全体に大きく影響するので、適切にバランスを取ることが大切ですね。加藤:大切にしなければならないもの、譲ってはならない一線がありますね。しかし、様々な形で、根本のところに影響を及ぼし始めている。そして、それに気づかない。榊:どんな職場でも、社会から受ける様々な要請や影響には、対応せざるを得ませんが、そうした社会の価値観や状況が、大きく影響するもののひとつが、学校教育です。子どもたちが受けるひずみが大きくなり過ぎないように、充分に留意することが大事だと思います。緊張感を持って対応し、ずるずると、望ましくないところに行ってしまわないようにしたいものです。理事長としては、教員養成に携わる奈良教育大学の先生方や附属学校園の先生方と、十分に語り合い、あるべき教育が実現できるよう、後押しをしたいと思います。もちろん、教育の質を高めていく主体は教員の方々ですが、学生たちも含めて、大学全体で学んでいくことが大事だと思っています。宮下:私も、大学教員自身の学びはとても大事だと思っています。本学では、大学教員自身の学び続ける姿勢を大事にする研修などにも取り組んでいます。自身の研究成果を提供するだけでなく、教育現場に関わって得られた知見や学びを、研究に生かしたり、大学の授業で還元したりすることに努めています。榊:大学は、学生が自ら学び、考える場ですから、時には、大学教員の考え方や姿勢についても、「先生、それは少しおかしいのではありませんか」という質問ができるような場所であってほしいと思っています。5_SPRING 2022ならやま