ブックタイトルならやま2022年春号

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概要

ならやま2022年春号

理事長・学長対談特集学生は、これから40年も50年も生きていく上で何が大事であるかを真剣に考えているはずです。従って、知識の量は少ないかもしれませんが、教員が本当に大事なことを伝えているのか、そうでないかを直感的に感じ取る力があると思うんです。学生の指摘が仮に間違っていたとしても、疑問を投げかけられた教員が真剣に答え、充分に対話をすることにより、双方の理解が深まるはずです。教育者は、教え育てる者である前に、学ぶ者、則ち学者であってほしいですね。大学は学生だけでなく教員にとっても大いなる学びの場であるべきで、単なる教えの場ではないからです。もちろん、教育と研究が大学の二大任務ですけれど、“教育”という言葉には充分に注意することによって、学びを重視する場にしていきたいと思っています。宮下:教育という言葉を注意深く扱わなければならないという点については同感で、もはや当たり前とされているようなことに問い直しをかけなくてはいけないことが幾つもあると思うんです。なので、教育を変えるというよりは、今していることの意味や、教えることの内容や方法もそうなんですけれど、それらの本質を、もう一度ひとつひとつ疑ったり、本当に正しいかどうかを確認したりしていきたいと思っています。それは、教わるだけの学生じゃ気づかないと思います。だから、まず教える大学の教員が、「この本質はどういうことなのか」というようなことを学生に投げかけたりする場を、いろんなところでつくる必要があるかなと思います。疑問に思ったり、意見があったりしたときに、気さくに、自由に発言できる大学をあらためてつくっていきたいですね。奈良教育大学の使命宮下:榊先生が子どもたちのために、この国の学校教育を変えていきたいと思っておられるということがよく分かりました。そして、だからこそ、非常に大変なお仕事かと思うのですが、師範学校をルーツとする奈良教育大学と奈良女子大学の法人統合に期待をされて、理事長をお引き受けいただけたのかなと思いました。今日のお話を伺って、私も学長として、共に頑張らねばならないなということを感じたところです。榊:これは本当にありがたいお言葉です。御指摘いただいたとおり、教育の質をさらに高めたいとの気持ちがあって、奈良教育大学と、奈良女子大学とがつくる法人の理事長職を引き受けさせていただきましたが、私自身は大学で、わがままな研究者として過ごしてきた者でもあり、十分に貢献できるかどうか心配しています。幸いなことに両大学では、教育をライフワークとして取り組んでこられた先生方が、頑張っていただける体制が作られていますので、体制を強めることに努めていきたいと思います。なお、私のように研究主体の人奈良国立大学機構理事長さかき榊ひろゆき裕之東京大学名誉教授豊田工業大学名誉学長学校法人豊田学園フェロー令和4年4月に奈良国立大学機構理事長に就任。専門は半導体電子工学。生を過ごしてきた人間としては、先生方の取り組みを学ばせていただき、質問やコメントをし、いくらかの助言をすることができるかと思います。理事長ができることには限りがありますが、力になれることをしっかりとやっていきたいと思っています。今後、20年、30年経ったとき、今の大学生の皆さんが、「奈良教育大学で学んで良かった」と言えるような大学にすることが、理事長も含め、全教職員の責務だと思っています。独り相撲にならないよう留意しつつ、学生の皆さんも含め、関係者全体で共通の使命を担い、前進していきたいと思っています。加藤:奈良教育大学の新たな地平が、しっかりと見えてきました。4月からの奈良教育大学のさらなる発展に大いに期待しております。本日はありがとうございました。奈良国立大学機構大学総括理事奈良教育大学長みやした宮下としや俊也奈良教育大学教授、理事・副学長(教育担当)などを経て、令和4年4月に奈良国立大学機構大学総括理事、奈良教育大学長に就任。専門は音楽教育学。SPRING 2022ならやま_6