ブックタイトルならやま2023年春号

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概要

ならやま2023年春号

クローズアップ+化学反応について調べています。高分子化学といって、高校の化学の教科書の内容でいうと、高分子材料(ポリスチレン、ポリブタジエンなど)、反応速度論、反応機構論、金属錯体化学などの分野と深い関連があります。直接調べているのは、このようないわゆる高分子化学といわれる分野ですが、私が調べたいのは、物質の変化を調べる学問である化学の中の、化学反応の詳細な中身です。私の研究紹介として「物質をつくってはかる」と題した奈良教育大学のe-bookや「なっきょんナレッジ」に「化学反応の最中にはどのようなことが起こっているのか?」と題してもう少し詳しい話を書いているので、興味のある人はそちらもご覧ください。どちらも奈良教育大学のホームページで読めます。卒業研究を本研究室で行う学生はこの装置を使って実験します。この装置は幅広くいろいろなことが測定できる装置なので、化学反応の研究だけでなく、身の回りの物質を測るような研究もしています。卒業研究や専門的な化学の研究に使う装置ですが、何ができるのかを中学生に説明することもあります。写真1は、中学生が見学に来た時のものです。卒業研究や大学院の研究では、前述したような化学反応の反応機構といった深く化学に根差した研究を行い、学生が学会で発表することもあります。それに加えて、将来、学校の教師になった時に、「大学生の時にこんな研究をしていた」とか、「この分野については非常に詳しい」などといえるように、教材になるような研究もします。例えば、大学の構内にも紅葉する木としない木とがあります。同じ木の、緑色の葉と黄色や赤色に変わった葉とでは季節によってなにがどう変化するのかを調べる研究や、日焼け止めクリームがどの程度紫外線を遮断する力があるのかを調べる研究、磁石の原理に関する研究などを行ってきました。このような研究の成果は奈良教育大学紀要という本にまとめて発表しています。本学のホームページから全文を読むことができます。興味がある人は読んでみてください。私が実際に行っている専門的な研究ももちろん論文として発表していますが、そのほとんどは英語で書いた論文です。もし興味があれば、例えば、A.Kajiwara, Pure & Appl. Chem., 2018, 90, 1237.などを読んでみてください。1ESRを使って、中学生と実験本研究室の卒業生も書いてくれているように、大学での研究には「答え」がありません。指導している教員が「正解」を知っているわけでもありません。おそらくほとんどの人は答えがまだわからない問題に取り組む経験に卒業研究ではじめて出会います。そしてそれこそが本当の研究です。失敗を重ねながら自分で考えていく面白さは、上質な推理小説を読む時の感覚と似ています。そして時として思わぬ発見をすることがあります。電子スピン共鳴分光(ESR)装置化学に国境はありませんので、国内だけでなく外国からも学生や研究者が本研究室へ測定に来ます。これまでに来た順に、オランダ、フランス、中国、韓国、ドイツ、フランスの大学から、大学院生や研究者が測定をするために本研究室に数週間から数カ月滞在しました。2回出てきたフランスからの研究者は別々の人です。滞在中は研究室の学生とも交流するので、ちょっとした国際交流の場にもなっています。11_SPRING 2023ならやま