ブックタイトルならやま2023年春号

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概要

ならやま2023年春号

特集奈良教育大学で学ぶESD2007年3月、本学で開催されたユネスコ東アジア地域世界遺産教育国内ワークショップで、ユネスコ本部ユネスコスクールの担当官のS.ニーデルマイヤーさんという方がお話ししてくださったんです。それがまさにESDの話でした。その時に雷に打たれたんです。これからの教育の未来が開けたような感覚がしました。それからESDの本を読み漁るなど、自分でずっと勉強して、縁があって本学で採用していただいたので、今度はそれを学生たちに伝えていきたいなと思いました。そういうわけもあって、単に知識を伝達するだけでなく、教育する人のその姿勢、熱意を、学ぶ楽しさを伝えていかないといけない。それで学生サークルとしてユネスコクラブを立ち上げたんです。川田ユネスコクラブは、結成当初は4人でしたが、現在は98人の学生が所属する、本学の中でも最大規模の団体の一つになりました。普段は、学校での出前授業やキャンプファイヤーなどの野外活動支援といった実践的な活動と、ESDの勉強会や防災に関する取組みなどのESDの理論を学習する活動の2つを活動ごとに参加者を募って集まり、活動しています。田中中澤先生はじめESD・SDGsセンターの先生方が企画されたり登壇されたりするフォーラムなどに参加したり、時に私も登壇させていただくなど、日々ESDの最新の情報を得ながら学んでいます。主体的に学び続ける教師が求められている中で、ユネスコクラブで学ぶことで、ESDについての理解が深まり、実践力が身についてきていると感じています。榊中澤榊自ら学び、探索することの楽しさを実感することが大切ですね。人は、何か新しいことを知ったり、見つけたときには、脳内ホルモンが分泌され、嬉しい気持ちになるものです。誕生から学校に行くまでは、この楽しむ気持ちが強いですが、学校に入ると、喜びが弱まり、学びが義務みたいなものになりがちです。学ぶことの楽しみを保たせ、強めることが、教員の最優先の仕事だと思います。また、教育大学で学んでいる学生は、教員になるために所定の事項をしっかり学び、良質な研修も受けますが、それ以外の様々な経験をすることも大切です。その意味で、ユネスコクラブなどの課外活動に加わることは、本当に素晴らしいことですね。教えてもらったことを杓子定規に使うだけではなく、自ら学んで身につけることが大事ですね。今までの研究は教え方ばかりで、子どもがどんなふうに受け止めるかということを研究していませんでした。子どもを意識して授業をすると、すごくうまくいくんです。学ぶ側の立場になって考える重要性をわかってほしいですね。シカゴ大学で教育学の博士号を取得された南山大学元学長のM.カルマノ氏から、「学ぶことができても、教えることができないことがある」との考えを教えてもらったことがあります。教えることは大事ですが、それだけでは不十分で、自ら学ぶ機会を与えないと人は育たないとの考えです。福沢諭吉にも類似の考えがあり、慶應義塾は、教える側と学ぶ側とを分けずに、互いに教え合い、学び合い、啓発し合う「半学半教」の体制を目指すべきであるとの言葉を残しています。ESDは、地球環境に関して、身の回りの社会から教え込むのではなく、自身が住む世界について自ら学び、自ら考える機会を提供するものなので、とても重要ですね。ユネスコクラブ2011年7月29日、教育学部1回生1名、教職大学院3名の4名で発足。ESDのプログラムのみならず、様々なスクールサポートへの参加、また、震災や水害によって被災された学校への復興ボランティアや支援、他大学のユネスコクラブとの交流などを通じて教育実践力を磨いています。2019年11月には、パリのユネスコ本部に招かれ、クラブ員がESDティーチャー認証プログラムについて発表をしています。半学半教教える立場の人と学ぶ立場の人が、定められた別々の立場にあるのではなく、双方が教えあい、学びあうことが大切であるという、「学び(学問)」についての考え方。教え込み、理解させる教育から、ファシリテートすることで、学習者が理解を深め探究していく教育は、ESDの真髄でもある。3_SPRING 2023ならやま