ブックタイトルならやま2023年春号

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概要

ならやま2023年春号

特集奈良教育大学で学ぶESD川田実際、春日大社で神様にご奉仕されている神職の方とお話をする中で、奈良にずっと続いてきた春日大社の信仰、奈良の昔の人たちの思いのようなものが、春日大社が残っている理由のひとつだというお話を伺いました。奈良でESDを学んでいるからこそ、つながった縁だと思います。他にも、ESD・SDGsセンターの杉山先生が行っている世界遺産の春日山原始林でフィールドワークを行う連続セミナー『春日山原始林・奈良公園フィールドワーク』にも参加して、普段は行けないような所に連れて行っていただいたりしています。奈良でしか体験できないようなことをさせていただいているという実感がありますね。榊目の前に数百年から千年以上の歴史を持つものが残され、引き継がれ、次代を担う若者など多くの人に今も語りかけていることは素晴らしいことですね。私の専門の電子工学では変化が速く、ハイテク機器は次から次へ変わっていきますが、そうした技術の進歩の一方で、千年スケールで続けていくことの大切さに気付き、実感を持つことはとても大切です。奈良教育大学で4年間の学生生活を送る中で、奈良という環境をしっかりと活かしていただきたいと思います。自分にとってのESD中澤ESDで一番大事なことは、私は「利他」を学ぶことだと思っているんです。「利他」の大切さに気付かせてくれるものがESDなんです。ドイツの哲学者E.フロムは、獲得する喜びと与える喜びがあるが、与える喜びが本当の喜びだと述べています。私はESDの本質はそこにあると思っています。子どもたちにも、友達のために何かするとすごくいい気分になるんだということを感じ取ってもらおうと思ったら、日々先生が利他が大事だということを、子どもたちに伝えていくことが大事なんですね。なかなか今は、自分のための勉強になってしまいがちですが、自分のためだけだったら続かない。でも人のためなら自分の力以上に頑張れる。そういう利他の精神がESDの中では大事かなと思っています。田中私にとってESDは、将来教師を目指す者にとっての光だと思います。今の教育の状況は確かに大変な部分がたくさんあります。周りの人にも教師の大変さを言われたりして、入学時には不安な気持ちもありました。でも、ESDティーチャープログラムなどで、ESDを実践されている先生方と出会ってみたら、みなさん本当に元気があって。子どもたちに伝えたい、だから自分がもっともっと勉強して知識を増やしたいとすごく輝いていらっしゃるんです。だから、教師になってもしんどいことばかりじゃない、ESDのような希望、楽しいこともたくさんあるということを伝えたいと思います。川田ESDはすごく人間らしくて面白いものだと思っています。今、SDGsが世の中全体の課題として言われていて、環境問題を解榊決しなければいけない、エネルギーを使わないほうがいい、人権は守られるべきだ、というような目指すべき方向性をある程度理解していても、自分自身の今のこの楽しさ、欲望もある。それを授業の中で子どもたちに葛藤させてどういうふうに行動するか考えさせるというのがすごく面白いなと思っています。今の学校で行われていることは、正解がある程度用意されているものが多いんですが、ESDの場合は答えがない。先生も正解を持っていないから、みんなで考える。その面白さがESDの魅力だと思っています。今日、皆さんのお話を聞きながら、自分たちが現代生活の中で享受しているものに比べ、どれだけのものを、社会や未来に対して返せているのかと考えさせられました。水や食料に加え、空調機やスマートフォンなど、技術の恩恵も多く受けている。それに対し、自分たちは社会や地球システムに十分に返せているのか。受けている恩恵を無駄にしていないか、どうすれば還元できるか、こうした問いを持ち続けることも、人類社会や地球生態系の「持続性」の確保のひとつの方法だと思います。本学など国公立の大学は、次の時代を担う優れた人材を育ててくれるという社会的期待があって納税者から財政的支援を受けています。学生時代は恩恵を受ける立場ですが、社会に出れば返していく立場になります。国公立大学の教職員と学生とが、こうした考えを共有することが非常に大切です。第二次大戦後の75年間、世界の経済や技術は大きく発展してきましたが、2100年までの今後の75年間は、人類と地球の持続性を徹底的に考えながら社会の仕組みを変えていく75年だと思います。本学でESDを学んだ皆さんが教師になり、次の時代に向けて持続可能な社会のつくり手を育てていく。このことに大いに期待しています。5_SPRING 2023ならやま