ならやま春号

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クローズアップ1持続可能な発展に関する価値観2システムズシンキング3クリティカルシンキング4情報を収集・分析する力5コミュニケーション力6リーダーシップの向上さて、奈良教育大学は2007年に日本で最初にユネスコ....

クローズアップ1持続可能な発展に関する価値観2システムズシンキング3クリティカルシンキング4情報を収集・分析する力5コミュニケーション力6リーダーシップの向上さて、奈良教育大学は2007年に日本で最初にユネスコスクールへの加盟が承認された大学だということは御存じだと思います。しかもユネスコスクールにはESDの推進役としての役割があります。そこで本学では持続発展・文化遺産教育研究センターを設置し、ESDや世界遺産教育の実践的研究に取り組んでいます。世界遺産教育はすばらしいでは、ESDは具体的にはどのように進めていけばよいのでしょうか。子どもにとって身近なものを切り口に進めていくのが正解です。子どもの学びはいつも具体から抽象へです。では、奈良の子どもにとって身近なものは何でしょうか。他にはないが、奈良にある特徴は何でしょうか。それは世界遺産が3件もあるということです。また、世界遺産でなくてもすばらしい社寺がたくさんあること、伝統的な行事が残っていること、つまり豊かな文化遺産に恵まれていることです。この文化遺産を切り口としたESDを世界遺産教育と言います。世界遺産教育には2つの方向性があります。一つ目に世界遺産から地域遺産へ、二つ目が地域遺産から世界遺産へです。一つ目の世界遺産から地域遺産へですが、例えば世界遺産である法隆寺を教材として取り上げます。法隆寺はおよそ1300年前に建てられた世界最古の木造建造物です。その柱に注目すると、あちらこちらに修復の跡を見つけることができます。木造建造物は、そのままでは1300年間ももちません。各時代の人々による修復を重ねながら現在に至っているのです。法隆寺を学んでから、地域の社寺の建造物を見てみましょう。やはり修復の跡があるはずです。この事実から文化遺産は大切に守られてきたものであり、次の世代にその価値を損なうことなく、伝えていくものということが学べるでしょう。また地域の文化遺産を学ぶことが地域の歴史や魅力を発見する契機となり、地域を大切にする心が育ちます。この地域を大切にする心が、持続可能な地域社会の創造にむけた行動化の基盤になります。さらに、西洋の石の文化に対して、日本は木の文化です。木の文化を伝えるためには、山に木を植えなければなりません。いくら立派な技術があっても、材木がなければ修復はできないのです。この事実から森林環境教育へと展開していくことも可能です。二つ目の地域遺産から世界遺産へですが、例えば地域の棚田を教材として学びます。棚田をめぐる生物のつながり、棚田の保水力、棚田を中心にした人々の結びつき、伝統行事などなど、学べることはたくさんあります。一方、世界遺産にも棚田があります。フィリピンのコルディリィエーラの棚田群です。イフガオ族の人々は今も棚田を中心にした暮らしをしています。地域の棚田学習とフィリピンの棚田学習によって、地域に埋没することなく、グローバルな学習に発展することができます。このように世界遺産教育はESDとし沖縄の世界遺産識名園にてて有効です。しかもよく考えると文化遺産や伝統行事は奈良だけでなく、日本中、いや世界中どこにでもあります。ですから、奈良教育大学で開発した世界遺産教育は、実は奈良だけでなく、どこででも実践可能なESDでもあるわけです。松尾芭蕉と私(松島にて)奈良教育大学での学び私には奈良教育大学で自分の人生観、教育観が変革する経験が二度ありました。一つ目は、大学院でのことです。私は公立小学校の教員として、特に社会科教育の研究に取り組んできました。社会科は問題解決学習でなければならない、とよく言われます。私は15年間にわたり毎年研究授業を行うなど、実践的な研究を重ねてきましたが、どうも子どもに力がついたように感じられず、本当に問題解決学習は有効な学習方法であるのか、と13_SPRING 2012ならやま