ならやま春号

ならやま春号 page 15/24

電子ブックを開く

このページは ならやま春号 の電子ブックに掲載されている15ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
いう疑問を解決するために奈良教育大学大学院の門をたたきました。そして田渕先生に出会い、ヴィゴツキーの構成主義を学ぶことができました。ヴィゴツキーの学習理論は私にとって難解でした。しかし最近接発達領域の....

いう疑問を解決するために奈良教育大学大学院の門をたたきました。そして田渕先生に出会い、ヴィゴツキーの構成主義を学ぶことができました。ヴィゴツキーの学習理論は私にとって難解でした。しかし最近接発達領域の理論や生活的概念と科学的概念の融合による学力形成など、目からウロコの学びの連続で、こんな大事なことを知らずに15年間も教師をやっていて、これまで担任した子どもたち、すまぬすまぬという思いでいっぱいでした。この後悔の念を胸に本と格闘し、読み取れたことを授業で試すという理論と実践の往復運動の末、ヴィゴツキーの学習理論を用いた社会科の授業法を確立することができたのです。このヴィゴツキーの学習理論ですが、ESDで育みたい力の育成にも有効であると判断し、現在再びヴィゴツキー研究に取り組んでいます。奈良教育大学は学生と教員の距離が近い、という特徴があります。大学院2年目の夏になっても、まだ解決の糸口さえ見つけることができなかった私を見はなすことなく、最後まで一緒に研究してくださった田渕先生との出会いは一生の宝物です。自ら学ぼうとする気持ちがあれば、いつでも相談にのってもらえます。奈良教育大学は本当の学びができる大学だと思っています。二つ目は、大学の教員になってからのことです。ボランティアサポートオフィスみち相談員の小島さんが、十津川村での「道ぶしん普請」ボランティアのチラシを手に国際交流オフィスに来られました。奈良県南部には「紀伊山地の霊場と参詣道」という世界遺産があり、吉野・高野山・熊野の3つの霊場とそれを結ぶ「古道」が世界遺産に登録されています。この「古道」が台風12号で被災しており、その修復ボランティアを募集していたのです。私の心は揺れました。1これは世界遺産の修復に関わることができるめったにないチャンスだ。まさにESD体験ボランティアだ。参加しよう。2なんでお金を払ってまでボランティアしなあかんのやろう。それに十津川は遠すぎる。私はそれまでボランティアをしたことがありませんでした。心の中では1と2が葛藤を繰り返していましたが、小島さんの笑顔に負けて参加することになりました。7人の学生と3人の教職員による奈良教育大学チームです。玉置神社近くの「大峯奥駆道」は台風の影響で、大量の杉の葉や枝、岩などに覆われ、どこが道なのか見分けがつかない状態でした。そこを奈良教育大学チームが、わっせわっせとトンガを振り、ジョレンでならし、竹箒で掃いていくと、古道が現れてくるのです。昔の人たちもきっとこうして「道普請」していたに違いないと思うと、歴史に参加できたという思い、次の世代に価値を損なうことなく伝える活動をしているという充実感でいっぱいになります。しっかり働いた後は、みんなで温泉につかり、鍋を囲みました。なぜかはわかりませんが、誰もが笑顔です。楽しい。来てよかった。また参加したい。笑い声が冬の夜空を明るくしていました。人生にとって大切なことが少し見えてきたような気がしました。十津川道普請ESD体験ボランティアユネスコクラブ飛鳥寺での集合写真ESD体験ボランティアはすばらしいです。言葉にはできない、やった人だけにわかる価値があります。ボランティアを体験した人が教員になれば、きっとその素晴らしさを子どもたちに伝えることでしょう。そして成長した子どもたちは、ボランティアをする人になるはずです。この静かだけれど確実な動きが、日本や世界を変えていくのだと期待しています。教員を目指す人には、一人でも多くボランティアを体験してほしいと思います。これからのこと昨年の7月にユネスコクラブができ、私が顧問をしています。ユネスコクラブはESDの行動化の側面を楽しく追究するクラブです。今、15名ほどの部員が、しょっちゅう研究室に来てくれます。私は授業ができること、学生諸君と笑いあえることを、本当にありがたいことだと実感しています。これからの教育を担うみなさんに、ESDももちろんですが、学級経営の楽しさ、授業のコツ、保護者対応のことなど、経験を通して学んだことを伝えたり、現職教員とのつながりを作ったりしていければと思います。SPRING 2012ならやま_14