ならやま2012年秋号

ならやま2012年秋号 page 12/24

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クローズアップ本学教員の研究を詳しく紹介いじめ問題の解決におプロローグ今、いじめ問題は、わが国の学校教育現場で最も深刻な問題となっています。私はこれまで、いじめ問題の解決策を求め、学校教育の視点から実....

クローズアップ本学教員の研究を詳しく紹介いじめ問題の解決におプロローグ今、いじめ問題は、わが国の学校教育現場で最も深刻な問題となっています。私はこれまで、いじめ問題の解決策を求め、学校教育の視点から実践研究を深めてきました。まず、いじめ研究を始めるきっかけとなった実践研究を紹介します。小学校教育現場で実践した「いじめ克服への取り組み」(※1紙数の関係で詳細は拙著)に譲りますが、「いじめ克服への取り組み-学年教師による心理劇活動を通して-」の実践です。その当時、私は新構想大学院(開学2年目の兵庫教育大学)で、臨床心理学を専攻し、登校拒否児の遊戯治療に関する理論と実際を佐藤修策先生(後の兵庫教育大学長)から学びました。その後、現場復帰したのですが、昭和60年当時、いじめ問題が全国的に起こっていました。いわゆるいじめの第1波と呼ばれたころでした。勤務校でもいじめの問題が出始めていました。そこで私は、いじめの苦しみを心から分からせ、いじめに立ち向かう力を育てるため、教師によるいじめの心理劇(サイコドラマ)を構想しました。対象は、250名の小学校5年生全員です。私は、サイコドラマでいう監督兼ファシリテーター(進行役)をつとめました。いじめっ子、いじめられっ子、周りの子ども(いじめに加担する子、見て見ぬふりをしてしまう子、転校して間もない子)役には私以外の学年教師がなり、役割は相談して決めました。日常的にありそうないじめの場面を2つつくり、場面のやりとりは全て先生方の即興で実施しました。リアリティ感のあるいじめのロールプレイに、子どもたちは日頃の自分の行動と重ね合わせて見ていました。はじめは何が起こるのだろうかとびっくりした表情で、ワーワー言いながら見入っていました。演技後、私は、どういう気持ちでそのような行為をしたのかインタビューしました。いわゆるシェアリング(振り返り)です。これはサイコドラマの中核をなす重要な部分です。当時、カウンセリングといえば個別の相談が中心だったのですが、学校教育現場の授業に生かせるよう工夫しました。その後、本実践は、当時学校長であった福呂昌信先生の強い薦めで論文応募し、第34回読売教育賞児童生徒指導部門最優秀賞に輝くという栄誉を得ました。読売新聞本社(東京)で開催された表彰式では、審査委員長であった波多野完治先生(児童心理学者、お茶の水女子大学名誉教授)から「最も今日的な課題であるいじめ問題の解決に向けて、一つの処方箋を示す学校現場ならではの実践である」とお褒めの言葉をいただきました。まさに学年教師6名がチームで得た賞でした。賞状には「わが国の教育に貢献するところ多大」という文字が光っていました。もちろんいじめられている子の表情は明るくなり、いじめはなくなりました。昨日のことのように思い出します。これ以来私はいじめ問題に打ち込むようになりました。この実践を振り返ると、「観念的理解では実際の態度、行動まで変える力はない。心情的理解が成立したときに子ども自身が自分の行いを変えるのである。(三宮1990)」という認知心理学の知見と符合していることが分かります。11_AUTUMN 2012ならやま