ならやま2012年秋号

ならやま2012年秋号 page 14/24

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クローズアップ2いじめは被害者の隠蔽心理により、見えにくくなるいじめられている子は、人前で楽しく遊んでいるように振る舞い、いじめの対応を難しくしている面がみられます。中井(1996)は「そのときの子どもの....

クローズアップ2いじめは被害者の隠蔽心理により、見えにくくなるいじめられている子は、人前で楽しく遊んでいるように振る舞い、いじめの対応を難しくしている面がみられます。中井(1996)は「そのときの子どもの眼は笑っておらず、遊びに欠かせないダイナミックな揺らぎがない」と述べています。いじめは、よほどめざとい大人の眼にしか留まらないのです。子どもの様子を鋭敏にキャッチできる臨床的センスが必要です。では、臨床的センスを身につけるにはどうすればよいのでしょうか。次の視点が参考になると思います。3ヴァルネラビリティ(vulnerability)の着目と支援聞き慣れない言葉ですが、「攻撃誘発性」と訳します。簡単にいうと「いじめられやすさ」のことです。例えば、転校生や障害のある子ども、協調性の乏しい子などは、異質な存在としていじめの対象となりやすい傾向性をもっています。しかしそのような傾向があるからといって、いじめられて当然であるということではありません。ここは、注意が必要なところです。仮に、いじめられている子どもに問題があるとするならば、それは、その子どもの個別の支援課題だととらえて対応すべきです。「あなたにもいじめられる原因がある。いじめられても仕方がない」などの態度で臨むと、いじめられている子どもは自分から苦しい胸のうちを打ち明けることをしなくなります。そのような態度は、結果的にいじめを助長し、いじめを許すことにつながりかねません。子どもと接するには、「いじめられやすさ」をもっているか否かの視点から支援していくことが重要です。4学級集団に生じる「ピア・プレッシャー」への配慮と対応現代社会においては、人々の人間関係は希薄な傾向にあります。子どもたちも例外ではありません。関係が希薄なため、級友のちょっとした言動に傷つき、強い者に巻かれてしまう状況がみられます。これをピア・プレッシャー(仲間の同調圧力)と呼んでいます。いじめ予防の観点から、子ども相互の人間関係、絆を深める取り組みが是非とも必要です。5共同性意識を育てるピア・サポート及びピア・メディエーションの導入いじめの最大の防御は、子ども相互の人間関係の形成と良質なコミュニケーションの育成を図ることです。すなわち予防的対応を早期に進めることです。関係ができれば、絆が深まり、お互いに許しあうなど寛容な関係が生まれます。また、学級に共同性意識が芽生えます。その意味でピア・サポート活動の導入は非常に有効です。しかし、学校ではもめごと・トラブルは日常的に起こっています。関係が深まると必然的に衝突やもめごとが起こるのも事実です。深刻な問題に発展する前に、早期にその対応方法を知っておくことは有益です。その指導法のひとつとして、ピア・メディエーションがあります。詳細は紙数の関係で述べません(※2が、詳細は昨年発刊した書籍)を参考にしてください。ゼミや授業等では、ピア・サポートやピア・メディエーションに関するトレーニング等を行い、また学校における日常的な問題への対応を検討しています。なお、最近、加害者と周りの子どもたちとの関係の修復(関係修復的正義と呼びます)を図っていくには、どのような手だてが必要かについても研究を進めています。わが国の教育を変える意気込みで取り組んでいます。?参考・引用文献?森田洋司ら2001いじめの国際比較研究-日本・イギリス・オランダ・ノルウェーの調査分析-金子書房中井久夫1996いじめとは何か「仏教」No.37法蔵館三宮真智子1990認知心理学の視点から鳴門教育大学学校教育研究センター紀要413_AUTUMN 2012ならやま