ならやま 2013年夏号

ならやま 2013年夏号 page 11/24

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クローズアップ本学教員の研究を詳しく紹介水は自然のメッセンジャー!フィールドからの情報を読み解く!陸水物理学とは?専門は、何ですか?と聞かれ、「陸水物理学」と答えると、次に何をやっている学問ですか?と....

クローズアップ本学教員の研究を詳しく紹介水は自然のメッセンジャー!フィールドからの情報を読み解く!陸水物理学とは?専門は、何ですか?と聞かれ、「陸水物理学」と答えると、次に何をやっている学問ですか?とさらに質問されます。そもそも「陸水」とは何か?「陸水学」とは何か?から説明しましょう。「陸水」とは、漢字が表しているように「海洋の水」に対する語であり、湖沼、河川、ダム湖、河口域、地下水、湿地、雪氷など、内陸部に存在する水を表わしています。つまり、われわれが生活している身近な自然に存在する“水”が当てはまります。「陸水学」は、この陸水に関する総合科学として発展してきました。英語では、Limnologyと訳されますが、Limnologyはギリシャ語のLimnos(水たまり、湖、沼沢)に由来し、元来は「湖沼学」を意味していました。現在は湖沼だけでなく陸水全般に関する科学として定義づけられています。現在のように陸水で生じる諸現象を総合的にとらえる研究は19世紀末に始まりました。スイスのレマン湖を対象として研究を進めたF. A. Forel(フランソワ=アルフォンス・フォーレル)博士(1841-1912)、日本では1899年に山中湖の測深をおこなった田中阿歌麿博士(1869-1944)などの研究がその始まりとされています。もともと、陸水学は、陸水で生じる諸現象の仕組みを解明することを主体としていた基礎(理論)陸水学が中心でしたが、その発展のなかから物質循環や水界生態系などを扱い、現在では、地球環境や水環境の悪化を防止するための応用陸水学も陸水学の重要な部分を占めるようになってきました。このように、「陸水学」は、基礎から応用に至るまで幅広い分野であり、私たちの生活に深い関わりを持っています。陸水学の分科として、陸水物理学(水の動きなど)、陸水化学(水質など)、陸水生物学(生息する動植物など)などがあります。その分科のひとつである陸水物理学が扱う領域は、水の中の生物の生息や成長、水色に関連する光、湖や池の水温の分布に関連する熱、物質の動きに関連する水の動きなどを明らかにすることが対象となっています。近年では、陸水学は、陸水だけを扱うのではなく、海(外洋)と陸との境界領域である沿岸海洋(岸に近いところ)も含め、山-川-海をF. A. Forel一連として考えるよう(『陸水学史』より)になってきています。陸水物理学との出会い!私が陸水学と出会ったのは、大学の2回生の時でした。それまでは、私自身も「陸水学」について全く知りませんでした。というのも義務教育段階では陸水についてはほとんど扱わず、高等学校の地学で初めて海について学習するのが現状です。では、どうして陸水学を扱う研究を志したかについては、高校生のころに高校物理の教員になりたくて、大学に進学し、物理学研究室への配属は決まっていましたが、2回生の時に私の恩師である奥田節夫先生プロフィール理科教育講座ふじい准教授藤井ともやす智康専門は、陸水物理学、沿岸海洋学。岡山理科大学大学院理学研究科博士後期課程材質理学専攻単位取得満期退学。博士(理学)(岡山理科大学,1998)。民間の環境コンサルタント(環境調査)会社勤務を経て、現職。奈良県環境審議会委員、愛知県長良川河口堰最適運用検討委員会委員など。現在、主に大阪湾の貧酸素水塊の動態、大気-海洋間の二酸化炭素の放出・吸収量に関する研究を行っている。チベット・プマユムツォ湖上(標高5020 m)SUMMER 2013ならやま_10