ならやま 2013年夏号

ならやま 2013年夏号 page 12/24

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クローズアップ(京都大学名誉教授、元京都大学防災研究所所長)が転任してこられ、量子力学や電磁気学を扱う物理学ではなく、自然を相手にさまざまな現象を明らかにしていくために物理学を用いる地球物理学教室の門....

クローズアップ(京都大学名誉教授、元京都大学防災研究所所長)が転任してこられ、量子力学や電磁気学を扱う物理学ではなく、自然を相手にさまざまな現象を明らかにしていくために物理学を用いる地球物理学教室の門をたたいたことに始まっています。そこから、大学院(修士課程、博士課程)に進み、今に至っています。恩師に出会っていなければ、どのような道に進んでいたかは分かりません。人との出会い、学問との出会いによって人生は大きく変わります。フィールドワークは重要!近年では、コンピューターの価格や処理速度などは昔とは比べものにならないほど安く、速くなっています。そのため、コンピューターを用いた数値解析(シミュレーション)などを研究手法に取り入れている研究者も多くなっています。シミュレーションは、将来の予測をするためには、絶対必要なものであることは間違いありません。しかし、シミュレーションのみでは実際の現象を間違って解釈する可能性が十分にあることを認識しておかなければなりません(恐らく、皆さんも予測結果が正しいと考えてしまっているのではないでしょうか?)。シミュレーションの元となるデータは、フィールドから得られるデータをしっかりと読み解き、ある現象が、どのようなメカニズムで生じているかを明らかにし、それを理論と結びつけ(数式化)、プログラムが作られ、初めて予測計算が可能となります。このデータ取得が適当であれば、予測も間違ってしまいます。つまり、陸水学や沿岸海洋学の分野は、フィールドからの情報は最も重要なものとなります。湖や海では、風が吹けば混ざり、気温によって水温分布が異なり、水温、塩分、溶存酸素などは日々変化していきます。そのため、さまざまな期間にわたっての連続的な観測を必要とし、同時に「根気」と「忍耐力」、そして調査は一人ではできませんので「チームワーク」を必要とします。1回だけの調査であれば、そのときに、たまたま生じた現象かもしれませんので、数回あるいは数年かけて調査を行います。そのデータを整理し、解析することにより、初めて1つの現象が説明可能となることも少なくありません。観測や調査は、寒い、暑いはもちろん、つらいこともありますが、力を合わせて貴重なデータを取得できれば、つらいことは忘れてしまいます。また、フィールドワークは、研究だけではなく、いろいろな人と人間関係を築ける場でもあります。調査には人の協力は必要不可欠であり、同じ研究室の者はもちろんですが、地元の漁師、水産試験場の研究員、他大学の先生や学生などの協力も必要となってきます。その中から、さまざまなことを学ぶことができます。そのため、私の研究室では、「青白きインテリはダメ!」、「根気!」、「チームワーク!」の3つが重要だと常に言っています。私の学生時代の経験を話しますと、研究対象としていたフィールドは、中海・宍道湖(湖面積が日本で5位と7位の湖)であり、水産試験場の船で調査に出かけ、船上で1時間間隔に24時間調査をしたり、漁師さんの船で調査に出かけたりしていました。さまざまな話を調査中に聞くことができ、授業としての実習よりも、実習効果はあったように思います。また、湖の中への観測機器の設置については、恩師から「水のことをやるなら一度自分でみてきなさい。私も昔、潜って調査をしたことがある」と言われました。それもあり、大学院の時にスキューバダイビング(Cカード)、潜水士、小型船舶操縦免許を取得し、自分で研究に使用する観測機器の設置状況を潜って見てきました。潜水してみると、自分で取得したデータも違って見えてきます。実際にフィールドを“見る”、“感じる”ということはこの分野の研究にとって重要なことです。淀川調査中海の湖上にて(大学院学生時代)中海の水中の機器設置状況(藤井撮影)11_SUMMER 2013ならやま