ならやま 2013秋号

ならやま 2013秋号 page 13/24

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鳥のはばたきの舞力を呼び込むことを優先します。彼らにとって稽古とは、すべてを受け入れ、それを力にできる身体の自由度と感度を研ぎ澄ますことなのかもしれません。白鵬や日馬富士は、しっかりと稽古も積みつつこ....

鳥のはばたきの舞力を呼び込むことを優先します。彼らにとって稽古とは、すべてを受け入れ、それを力にできる身体の自由度と感度を研ぎ澄ますことなのかもしれません。白鵬や日馬富士は、しっかりと稽古も積みつつこのような伝統的身体観も合わせ持つことが、強さの秘密の一端かもしれないと思います。伝統スポーツが教えてくれること自分の身体能力の数値を上げ、「理想の身体」に向けて鍛え上げることを疑ってこなかった私たちには、こうした身体観は少々理解しにくい概念かもしれません。しかし自分の身体を「理想の身体」に近づけようとすることは、心が肉体に「理想の身体たれ!」と命令し、心が身体を所有している状態といえるでしょう。まるで鏡に映る自分の身体をデザインしているようです。しかしそれでは、自らの「理想とする想定内」でしか変化は望めません。もちろん身体を鍛え上げる努力を否定するつもりはありませんが、客観的に身体をデザインすることのみでは、身体の在り様を根本からひっくり返すような、未知の身体の潜在能力を大きく開花させようとするときには、むしろ足枷になるかもしれません。そうした意味で、モンゴル相撲は身体の所有の概念をやすやすと超えたところにあるといえるでしょう。そしてそれが、スポーツの感動を生む本質へとつながっていくと考えます。スポーツは鏡に映る身体がするのではなく、こ・こ・に・あ・る・身体がするものなのですから…。「相撲の成熟は身体を劈き自由度と感度を高めることである」という考え方は、モンゴルの伝統スポーツが大切にし、信じてきたことだろうと思います。モンゴル国は現在、グローバリゼーションの風に大きく揺さぶられ、まさに激動の時代を生きています。これからモンゴルの伝統スポーツの身体観はどのように変化するでしょうか?これからも、できるだけ彼らの心性に寄り添った形で、モンゴル伝統スポーツが「大切にしているもの」「信じていること」の行馬乳酒をつくる子ども方を注意深く見ていくことを続けていきたいと思っています。そして、そこから私たちが求めるべきスポーツ・体育の姿も照らし出していければと考えます。AUTUMN 2013ならやま_12