@小学生に関わるケース
机の上を片付けられない子どもがいる

あなたは、小学校5年生を担任しています。4月の授業が始まってしばらくの頃、いつも机の上が散らかっている男子児童Uが気になりました。家庭訪問の時、母親からは「Uは学校からの連絡プリントをいつもなくしていしまいます。友達のお母さんから学校のことを教えてもらい、対応しています」という話を聞きました。あなたは、このような状況にどう対応しますか。

   
 【解説】
 身の回りの整理整頓については、家庭での習慣や児童の性格などによる個人差がある。しかし、中には個人差の範疇には収まらず、いつも机の周りに鉛筆や消しゴムが散乱し、授業が終わって帰るころには筆箱の中に何も残っていないという児童もいる。このような児童は、年齢に不相応な不注意があることからADHDの可能性も考えられる。ケースの児童Uも、「学校からの連絡プリントをいつもなくしてしまう」ということであり、小学校5年生であることからそのような一人であると考えられる。
 この児童はおそらく今まで、担任や保護者から何度も注意を受けてきたであろうし、何度も自分で気を付けようと思ったであろう。しかし、やはり片付けができず、児童自身も困っていると考えられる。このような児童に対して、担任は片付けられないことを前提に毎日実行できる方法を考えなければならない。このようなケースにおいてある教員は、児童本人、保護者と相談の上、児童の机の横に大きな箱を置くことにした。学級の児童には「もし教室などにU君の持ち物が落ちていたら、この箱に入れておいてね。U君が後でもって帰るから」と伝えた。児童本人に持ち帰るよう促したり、メモ書きを渡すなど児童本人に対して支援をしつつ、箱の中に残ってしまったものについては、金曜日の授業終了後、母親がその箱の中の物を回収しに来るようにした。この箱のおかげでUは持ち物を紛失することなく、担任や保護者から持ち物の紛失についての注意をされることもなくなった。
 これは、持ち物を紛失することへの対応の一例であるが、このような児童への対応を誤ると、自己肯定感の低下、不登校や不適応、保護者の苦悩といった二次的問題を引き起こす恐れがある。このような児童への指導では、個々の児童にある困難が円滑な日常生活を阻害しないように対応する、という発想が必要になる。

(「教師力を鍛えるケースメソッド123」ケース10より)