D地域や関係機関の方々に関わるケース
「たばこを吸っている中学生を補導してほしい」と電話があった

 あなたは、中学校に勤務しています。その中学校の近くにゲームセンターが開店しました。その店は、青少年保護育成条例にも無関心で、そのためか深夜には店の周りに中学生らしい若者がたむろするようになっていました。ある日の夜、あなたが学校に残って仕事をしていると、そのゲームセンターから「店の横で中学生がたばこを吸っている。すぐに補導しに来てほしい。」という電話がありました。あなたは、このような状況にどう対応しますか。

 【解説】
 青少年保護育成条例とは、ほとんどの都道府県が制定している条例で名称は都道府県により異なる。奈良県の場合は「奈良県青少年の健全育成に関する条例」と称しており、同条例第32条(深夜外出の制限)では、深夜の18歳未満の青少年の保護者を伴わない外出、遊技場への出入りを制限している。深夜とは多くの場合午後11時から午前4時までを指すが、都道府県により多少異なる。ゲームセンターは遊技場である。多くの店では、深夜の立ち入り禁止をポスターなどで掲示する、深夜の未成年者らしき客には声をかけ帰宅させる、未成年者が注意に従わない時は警察へ通報するなど、この条例を厳守している。
 ケースのゲームセンターは、青少年保護育成条例に無関心であることから、未成年者が深夜に集まりやすい場所になっていたと推察される。未成年者の喫煙は許されることではないが、喫煙が店の姿勢に誘発されたという点も見逃してはならない。ケースの場合、ゲームセンターの店員が喫煙を注意したのかどうかはわからない。ゲームセンターとしては未成年者の名前を確認し保護者へ連絡する、名前を言わなければ警察へ通報する、という方向で動くべきである。もし、中学生らしい若者が喫煙をしていることから、すぐに中学校へ補導要請という流れを取ったのであれば、あまりに安易な選択と言わざるを得ない。中学校は地域の警察ではないのである。
 これら店の姿勢とは別に、連絡を受けた教員は状況確認のためにその場に向かわなければならない。ただし、このケースのような校外での生徒指導は、必ず複数の教員で対応する。職員室に残っていたのが一人なら、複数の教員で対応できる体制が整うまで待てばよい。
 家庭や地域の教育力低下が言われて久しい。その原因は、家庭や地域が青少年に無関心であることのみでなく、青少年に関わる煩わしいケースを避けようとする傾向にもある。ケースのゲームセンターには、後日、自治会や警察などを通して改善を申し入れる。
(「教師力を鍛えるケースメソッド123」 ケース88より)