6.児童の身体に青あざや傷がある
【ファシリテーターの解説】

 これは、虐待が疑われるケースである。学校の教職員には、児童虐待の防止等に関する法律第5条、第6条に「・・・学校の教職員は・・・児童虐待の早期発見に努めなければならない。」「児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに・・・児童相談所に通告しなければならない。」とあるように、児童保護のために虐待の通告義務がある。また、その通告は通常学校組織として行うことになる。

このケースの場合、すぐに校長、教頭、生活指導部長、学年主任、養護教諭等と連絡を取り、学校全体に周知する。同時に、当該児童の状況の漏洩がないよう校長、教頭から全職員に連絡する。学校はすぐに校長名で、都道府県の児童相談所(名称はさまざまで、奈良県の場合は「家庭児童相談センター」と称している)に通告する。都道府県によっては、市町村の児童相談窓口経由で通告を受け付けている場合もある。電話での通告の場合、具体的には次のことを児童相談所に伝える。@○○小学校からの虐待の通告であること、A当該児童の名前・年齢・性別・保護者名・住所・電話番号、B当該児童の身体状況と虐待が疑われる理由、C現在の児童の居場所。書面での通告の場合にも、上記に準ずる様式が用意されている。これらは、児童や保護者の個人情報であるが、虐待の通告義務は公務員の守秘義務に優先する。この時点で、学校や担任は詳細な虐待の事実を確認する必要はない。虐待の事実の確認、緊急性の有無、今後の対応の方向付けは児童相談所が行うことになる。保護者へのその後の対応も、児童相談所と綿密に連携する。

 担任が、当該児童に対して傷ついた理由を聴取するときは、細心の注意を要する。本人が言いたがらない場合には強要の必要はない。傷の写真が撮れればいいが、難しい場合にはその必要はない。ただ、担任が傷に気づいた月日、傷の場所、形状、色(一度に付いた傷か、継続的に付いた傷かがわかる)、最近の児童のようすなどは、身体の図を添えて必ず記録しておく。これらの記録は、児童相談所が対応を検討するときの重要な資料となる。また、このケースの場合、保護者への聴取は、虐待の隠蔽、虐待のエスカレートの可能性があるため、絶対に行ってはならない。

 児童相談所は、児童に保護する者がいないと認められる、保護者が児童を虐待していると認められる、児童の行動観察が必要と認められるなどの場合に、児童を一時保護することができる。一時保護は原則として保護者の同意を得て行われるが、緊急性があると判断された場合はその限りではない。児童を一時保護した旨の保護者への連絡は児童相談所が行うが、学校在校時から保護された場合は学校も知らないでは済まされない。児童相談所と打ち合わせの上、保護者の逆恨みに備えて学校窓口の一本化、警察署への協力要請などを行う