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偶蹄目・シカ科・シカ属
ニホンジカ
学名:Cervus nippon 英名:Sika Deer


 日本の山野に広く生息する草食の獣。子鹿の「バンビ」ではないが,夏毛には「鹿の子模様」といわれる白い斑紋がある。母親の後を飛び跳ねるようについて歩く子鹿はかわいらしい。オスには角が生える。奈良公園では半野生化しており,公園内で身近にシカを見ることができる。

 日本に生息する哺乳類の中では大型の種。ヒグマ,ツキノワグマ,カモシカ,イノシシと共に5大大型獣とされる。

 ニホンジカの特徴をより理解するために,同じ偶蹄類(蹄が偶数の獣)のイノシシとニホンカモシカと比較してみる。

種名分布・食性・繁殖・社会・動態(個体群特性の違い)・その他
Sus scorofa

イノシシ

北関東・北陸以南の平地・山地(照葉樹林)
雑食(昆虫・種子)
年1〜2回,3〜6子出産。
オスとメスの性差(とくに体格の違い)は大きい(性的二型性大)。
メスは母子群を形成,オスは単独。初期死亡率が高い。
Capricornis crispus

ニホンカモシカ

四国・九州の脊梁地,近畿以北の山地・高地(落葉広葉樹林)
植物食(主に木本)
1〜2年に1回,1子出産。
性的二型性小(←原始的とされる)。
単独性,同性間でもなわばり,一夫一妻。初期死亡率は小さい。
Cervus nippon

ニホンジカ

関東・東北太平洋側以南(疎林・林縁性)
植物食(主に草本)
1〜2年に1回,1子出産。
性的二型性大。
群形成,オスは繁殖期になわばり,平均寿命はオス<<メス。
大規模な季節移動,短期間に大きな密度変化。
 シカ科の動物のオスには立派な角が生える(唯一の例外がトナカイでメスにも角がある)。枝分かれすることが多く枝角(えだづの)ともいわれる。枝角は毎年生えかわる。ちなみに,カモシカやヤギなどウシ科の動物の角は洞角(ほらづの)といい,内部に骨の芯があって生えかわることなく生涯生長する。

 体色は夏と冬とで異なり,夏毛は明るい赤褐色で「鹿の子模様」といわれる白い丸い斑点がある。子鹿の斑点には草むらに潜んだときの保護色としての機能もある。夏毛は9月ごろからしだいに冬毛にかわりはじめ,10〜11月には灰褐色の冬毛にかわる。後ろから見ると後ろ脚には白い線(中足線)がある。お尻にも白い毛(尾鏡という)があり,危険を感じるとこの毛を開いて仲間に危険を知らせるようだ。

 ニホンジカCervus nippon(日本鹿)というが,この動物の分布は広く,中国・ウスリー・韓国・台湾などにもいる。

 日本列島のニホンジカも場所によって体つきが違い(地理的変異)が見られ,いくつかの亜種に分けられている。本州にすむホンシュウジカC.n.centralisをはじめ,キュウシュウジカC.n.nippon(九州・四国),ヤクシカC.n.yakushimae(屋久島),マゲシカC.n.mageshimae(馬毛島),ケラマジカC.n.keramae(沖縄:慶良間列島),ツシマジカ(対馬),エゾシカC.n.yesoensis(北海道)がある。

 ニホンジカのなかではヤクシカは小型で,オスの体重は39〜48sである。ホンシュウジカは平均的なプロポーションで,体重は49〜80sである。エゾシカはホンシュウジカよりさらに大きく体重は80sを越える。これは,恒温動物では寒冷地にゆくほど大型になっていくという「ベルグマンの法則」に従う例でもあり,また島の動物が小型化するという例でもある。
 角は,ヤクシカでは枝分かれが少なく3尖で,長さ25〜33pと短く,ほぼ左右平行に生える。ホンシュウジカでは4尖となり,長さ34〜72p。エゾシカでは4尖で,長さ70〜82pで,大きく左右に開いて生える。