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4 肉眼によるキノコの観察ポイント


4-1 キノコを見分けるポイントは−科学的な観察とは−

 「キノコを見つけよう」のところでも述べたように、どんな樹木の林に、いつ頃、どのように生えていたかが、見分けるポイントになりますし、キノコ各部(や胞子)の形や色、味、においなども大切な特徴です。非科学的な迷信にとらわれず、視覚・味覚・臭覚・触覚の四感(この場合、聴覚はあまり役に立たない)をはたらかせて観察することが必要です。
イラスト−味覚と嗅覚を活用

 さて1500種類を越えるキノコを見分けることは、それほど簡単なことではないと予想されるでしょう。実際はやっぱりとても難しいです。ここ数年、キノコを見てきましたが、正確に種類を見分けること(同定という)は難しいと言えます。

 しかし、慣れれば、肉眼による観察だけでもだいたいの分類群の見当をつけることはできるようになります。例えば昆虫では、これはチョウの仲間、これはトンボの仲間というように分類群の見当をつけることは比較的簡単です。同じようにキノコでも、これはテングタケの仲間、ベニタケの仲間、イグチの仲間、さるのこしかけの仲間くらいは、1日キノコに親しめば分かるようになるでしょう。


4-2 キノコ型のキノコ、基本の部品は5つ

イラスト−キノコ各部の名称  いわゆるキノコ型をしたキノコには「傘(かさ)」と「柄(え)」があります。傘の下面には胞子を付ける「ひだ」があります。もっとも複雑な形をもつテングタケの仲間では、さらに「つば」と「つぼ」があります。
 根本にある「つぼ」は落ち葉などに埋もれて掘ってみないと分からないこともあるので注意が必要です。また、「つば」も脱落して無くなりやすいものがあります。 この5つの部品すべてが揃っているものはテングタケの仲間と思って間違いありません。テングタケの仲間には猛毒を持つ種類が多いので、この特徴をもつキノコを食用にするときは慎重になるべきです。

4-3 5つの部品、組み合わせは様々

イラスト−キノコ部品組合わせ例

 5つの部品すべてが揃っていないキノコも多くあります。
 例えば、「傘・ひだ・柄・つば」「傘・ひだ・柄・つぼ」、「傘・ひだ・柄」からなるキノコがあります。「傘・ひだ」のみの場合もありますし、傘の下面が「ひだ」状ではなく管孔(かんこう:管状の穴の集まり)になっているキノコや針状の突起が並んでいるキノコもあります。


4-4 キノコ型をしていないキノコ−その胞子散布の工夫−

 いわゆるキノコ型をしていないキノコもたくさんあります。キクラゲのようなゼラチン質のキノコ。さるのこしかけ類の作る硬質のキノコにもキノコ型のものは少ないです。腹菌類(主に胞子をキノコ内部に作る)や子嚢菌類(子嚢胞子とよばれる胞子を作る)の作るキノコにはおよそキノコとは思えない奇想天外な形のものもあります。
 普通のキノコ型をしたキノコは胞子を傘の下面につくります。成熟して放出された胞子は風に乗って散布されます。いわば「風散布」キノコです。また、ほとんどのキノコにはたくさんの虫やカタツムリなどが集まります。虫はキノコの菌糸や胞子を食べたり、卵を産みにやってきているのですが、キノコのほうも食べられてばかりではたまりません。スッポンタケ類やシラタマタケなど虫を利用して胞子を散布する、「虫散布」キノコもあります。タマハジキタケのように自力で胞子を散布するものもあります。地下にできるキノコであるトリュフ(セイヨウショウロ類)の胞子散布にはリスやモモンガなどの哺乳動物が関わっているのではないかといわれています。「哺乳類散布」キノコ?とでもいうのでしょうか。トリュフを探すのにブタを使ったといいます。野生のブタであるイノシシも地下にできるキノコを食べているかも知れません。
写真−キノコ虫  キノコとイノシシ

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