子嚢菌?担子菌類?子実体?とよくわからない言葉が並びますが、とにかくキノコは菌類に属する生物です。きのこ、茸と言うけれど、生物としてのキノコとはいったい何ものなのでしょうか。
今、地球上にある物質の中で、生物が利用できる物質はどのくらいあるのでしょうか。「地球は大きい」といっても生物が生活できるのはその表面のわずかな部分に限られます。生物の体の大部分は炭素、窒素、酸素、水素でできています。特に炭素は空気中に二酸化炭素として存在する分しか植物が利用することはできません。こう考えると生物が利用できる物質は意外に少ないのではないかと思えてきませんか。
5-5-2 リサイクルがキノコの仕事!?
キノコやほかの菌類たちは、植物や動物の体を作る複雑な物質を分解して、もとの単純な物質に還元する働きを持ちます。今風に言うと物質の「リサイクル」です。森の中で倒れた樹が土にかえるのは、小動物とキノコの働きによっています。木材の化学成分にはキノコしか分解できない物質が含まれています。もし、キノコがいなければ、森は樹木の死体で埋もれてしまうことでしょう。
植物がどんどん光合成をすれば、あっという間に利用できる二酸化炭素はなくなって、生物はすべてあの世行き・・・・・。こんな破滅へのシナリオが想像できます。しかし、生き物は現在まで生き残ってきました。早くから物質の「リサイクル」を行ってきたからです。
5-5-3 キノコと植物の深い関係
最近では植物が水中から陸上へ進出した際にも菌類が深く関わっていたと考えられるようになってきました。現在でもほとんどの植物の根には菌類がとりつき、植物と栄養分のやり取りをしています。植物と菌類は互いに協力することで過酷な環境へ適応してきたと言われています。キノコは体が柔らかいので化石として残りにくく、古生物としての研究は遅れていますが、最近、琥珀に閉じこめられたキノコの化石も見つかっているようです。キノコの進化論も面白いかもしれませんね。