食品栄養学実験(家庭科教育講座 杉山 薫)

 今月の『奈教の授業』では、「食品栄養学実験」を紹介します!

講義の基本情報〉
 ・対象学年:家庭科教育専修3回生

 ・受講者数:10~15名

どんな授業?

 小学校・中学校・高等学校で学んだ「家庭科」という教科にどのようなイメージを持っていますか。多くの方々が、ご飯、味噌汁、豚の生姜焼きなどの調理や、雑巾から始まり手さげやショートパンツを作った裁縫の印象が強く、衣および食生活の体験学習という印象を持っているのではないかと推察します。
 家庭科は生活を豊かにするための方法とその理論的裏付けを学ぶ教科であり、その学問的裏付けとして自然科学・社会科学を基礎とする応用科学があります。本授業では食物分野、具体的には栄養・食品・調理・食品衛生の各領域で学んだ知識を実験を通して確認し、知識の定着を図るとともに、その応用力を身に付けることを目的の一つとしています。また、受講生が将来家庭科を担当する教員になることを目指していることから、家庭科の授業の中で実験を指導する知識と技術、能力を身に付けることも目的としています。
 食物に関する学びは食文化などを除けば「物質の変化」を対象にしています。したがって、自然科学の基礎知識や実験手法基礎に授業を進めていきます。

授業の流れ

 前述の通り、本授業は自然科学の知識や実験手法を基礎としています。そのため初めの数回は本授業で使用する自然科学の知識について学習します。具体的には化学量論に基づく理論と計算、データの統計学的処理法などです。その後、中和滴定および同法による食品中の有機酸の定量、栄養素の定性および定量、酵素の性質と消化、食品色素の性質、食品の変色、調理操作中の食品の変化、食品添加物の検出などを行います。実験内容は器具や試料の入手事情から年度よって変わることがあります。

 各実験ことにレポートの提出を義務付けているので、受講生は報告書の書き方、考察の仕方も合わせて学習します。

授業の様子

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《中和滴定による食品中の有機酸の定量》
使用する試薬は 0.1Nの酸と塩基ですから、劇物ではありませんが、防御のため安全メガネを掛けます。

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《魚のすり身に関する実験》
水産練り製品の足(弾力性)に及ぼす因子(食塩の使用、前加熱の有無、魚種の違い)の影響を実際に水産練り製品を作って確かめます。

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《魚の酢じめに関する実験》
 魚の酢じめにおける酢の役割を確かめます。

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《食品中の天然色素の性質に関する実験》
 色素によって液性の違いに対する変色が異なります。

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《アミノカルボニル反応(非酵素的褐変反応)に関する実験》
 アミノ酸や糖の種類による褐変反応の違いを確かめます。

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《味覚試験》
 味感知時の脳血流量変化から脳の活動を推定します。

担当教員よりメッセージ

 家庭科は自然科学と社会科学を基礎とした応用科学が学問的裏付けになっている教科です。本授業では家庭科における自然科学的な面を学習します。基本は、直接的には大学における食物学分野の科目、高等学校における化学、生物ですが、家庭科の内容を理解する意思さえあれば、小学校での割合の計算をマスターしていればどなたにも理解できます。本授業を敬遠する方の最も大きな障害は「バカの壁」です。自分自身の「バカの壁」を乗り越える機会として勇気を出して挑戦しましょう。きっと世界が広がります。


 家庭科教育講座 教授 杉山薫

 ※この記事は、2021年7月現在の情報をもとに作成されています。

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