仏像とは何だろうか?~仏像の前で考える~(美術教育講座 山岸 公基) 公開日  :  2022-02-04 15:21

奈良教育大学
Knowledge

仏像とは何だろうか?~仏像の前で考える~(美術教育講座 山岸 公基)

 

 

今日は、文化遺産教育専修の山岸研究室を訪問したいと思います。こんにちは!

yamagishi_1.png

こんにちは。

先生は何を研究されているか、教えてください!

yamagishi_1.png

私は日本・東洋の美術史、特に仏像を中心とした仏教美術の研究をしています。

奈良には東大寺や興福寺、法隆寺など大きなお寺や古い仏像があって、仏教美術を研究する場所としてふさわしいですね。

yamagishi_1.png

その通りです。私も興福寺の阿修羅像や、法隆寺五重塔の塑像群像、惜しくも失われてしまいましたが創建された時期の東大寺大仏殿に懸けられた大織成像、そのほか奈良の仏像についての論文を書いています。

20220224111232-0001.jpg「法隆寺再建をめぐる政治情況と五重塔塔本四面具」『密教図像』26号

 

興福寺の阿修羅像は、顔が三つあって、眉を寄せた若々しい表情をしていますね。興福寺国宝館で見たことがあります。

yamagishi_1.png

ところでなっきょんは、興福寺の阿修羅像になぜ顔が三つある(三面)かわかりますか?

 

1403_037.jpg

......考えたこともなかったです。

yamagishi_1.png

明治以降の日本では、なっきょんだけでなく誰もその理由を考えた人はいなかったようです。私も研究の途上ですが、三面の阿修羅はヒンドゥー教のシヴァ神の図像が下敷きとされ、西暦500年前後に中国で出現したとみられます。阿修羅(原語ではアスラ)はユーラシアに起源する古い神で、その成立は興福寺の像が造られる2000年以上前に遡りますが、三面の阿修羅ができたのは興福寺の像の250年くらい前のことで、しかも東アジアにおける特異な現象だった可能性が大きいのです。

えーっと、ヒンドゥー教はインドという場所と切り離すことはできず、仏教は世界宗教なので遠く日本にまで伝わった、と何かで読んだ気がするのですが......

yamagishi_1.png

私は奈良教育大学に勤めて2年目に、文部省在外研究員(若手枠)としてインドに10か月派遣してもらいました。またその後科学研究費による海外調査で、インド・中国だけでなくバングラデシュ・パキスタンでの長期踏査に携わることができました。これらの調査を通じて、東アジアに仏教ないし仏教美術として伝わった中には、ヒンドゥー教などインドにおける非仏教文化や、ガンダーラにおけるギリシア起源の文化が広範に認められることを確信しており、それは南アジア美術・中央アジア美術の研究者の共通認識です。

 

1403_034.jpg

ふむふむ。では先生は、主に奈良の仏像のもとになったアジアの美術を研究しているのですか?

yamagishi_1.png

私はインド美術について概説を書いたり、中国の千手観音の論文を書いたり、百済に力点を置いて飛鳥~奈良時代の日本と朝鮮との文化交流についてシンポジウムで発表したりしていますが、日本の仏像についての研究が自分の軸足と思っており、仏像の意味や価値を、造った人、造立に寄与した人に目を配りながら、仏像の前で考えてきました。もともと『仏像とは何だろうか?仏像のすべてがわかるようになりたい』と無理な高望みをして研究へと足を踏み入れたので、奈良以外の日本の仏像についても、オファーやチャンスがあれば調査させていただいて、過小評価されがちな仏像の真価を広く伝えようと努めています。

日本国内ではたとえばどんなところで調査をしているんですか?

yamagishi_1.png

奈良とならぶ仏像の宝庫、京都はもちろんですが、実は仏像は、観光面で有名でなくても仏教寺院があれば基本的に安置されていて、その意味では日本のほぼ全域が調査対象地です。今までに大阪府、三重県、静岡県、千葉県、群馬県、新潟県、福島県の仏像についての論文や著書を書いていますし、足掛け17年の間県史の調査委員をつとめさせていただいた愛知県は、奈良県と並ぶ私にとって重要なフィールドです。また東日本大震災後は、岩手県陸前高田市と周辺の岩手県・宮城県所在の仏像の調査・考察に防災教育研修を兼ねた奈良教育大学陸前高田市文化遺産調査団の一員として毎年継続的に派遣していただき、有志の学生諸君との仏像調査を通じて知見を蓄積し、報告書も継続的に刊行してきました。

IMG_5270.JPG陸前高田市常膳寺での調査風景

1403_035.jpg

でも、現在はコロナウイルス感染症のせいで、現地での調査がなかなかできないでしょうね。

yamagishi_1.png

大きな影響を蒙っていますが、まだ活字化していない調査研究成果をまとめる好機に変えたいと思っています。

そうですね!先生の研究成果を読むのをを楽しみにしています!今日はありがとうございました。

 

美術教育講座 教授 山岸 公基

※この記事は、2022年1月の情報を元に作成されています。

 記事をお読みいただきありがとうございました!ぜひなっきょんナレッジに関するアンケートにもご協力ください。

カテゴリ   :   研究コラム
最終更新 : 2022-04-15 13:09