奈良教育大学理数教育研究センターでは、令和元年8月31日、9月1日の2日間、県下山村部にある曽爾小学校と中学校で「サマースクール 2019イン 曽爾」を開催しました。このサマースクールは、曽爾村との包括連携協力協定に基づいて行われたものです。本学が推進する、優れた教育実践力を持つ理数科に強い教員の養成を目的とした理数教育プログラムに参加する学生や教員が、理科・数学(算数)実験を中心とした特別授業を行いました。小中学校では普段できない実験などを目の当たりにした児童・生徒は、驚きと感動を胸に授業に取り組んでいました。また、国際交流留学センターとの協働で、本学に教員研修留学中のチャ・スンフン先生(韓国)に、中学生対象の化学分野の授業をして頂きました。その授業では、国際交流の企画もありました。今年は期間中天気が悪かった為、天体観望会は中止となりましたが、素晴らしい曽爾の自然環境の中で、共に思いっきり学びました。これらは、奈良教育大学及び曽爾村双方における教育・研究の充実につながる有意義な取組であり、連携協力事業として大きな成果をあげるものとなりました。
過去のサマースクール イン 曽爾
開校式ではまず、曽爾中学校校長吉田先生からお言葉を頂き、引き続き伊藤センター長からの挨拶がありました。その後、曽爾中学校生徒代表、新理数2回生代表の挨拶の交換が行われました。こうして2日間のサマースクールがスタートしました。
中学生に対して、新理数生企画による科学実験ブースの出展を行うチャレンジ!サイエンスを実施しました。
今回の授業では、簡易分光器という道具を用いて、蛍光灯や様々な色の折り紙の観察・スケッチを行いました。何の違いが光の色の違いなのか、私たちが普段見ている赤いものは、なぜ赤く見えるのか、日常の当たり前であることの理由を一緒に勉強しました。最後には発展課題として、私たちが普段過ごしている光(蛍光灯など)ではなく、赤い光の世界ではどのように見えるのか、部屋を暗くして観察実験を行いました。
この授業では、どのように距離を測るかという観点から三平方の定理を学びました。授業の初めに三平方の定理をパズルによって証明し、その後練習として三平方の定理を用いて直角三角形の斜辺の長さを求めました。また、実際に階段からの教室の距離を三平方の定理を用いて求めました。授業の後半では、空間についても三平方の定理を適用することができることを生徒とともに確認しました。
今回の授業では、2進数を使った誕生月の数当てゲームを行い、2進数について学習しました。2進数を理解した後、生徒自身で誕生日の数当てゲームを考案し、教員や見学者に対して何月何日生まれか当てるゲームを行ってもらいました。また、授業の後半では、2進数が生活の身近なところで活用されている例としてコンピュータを紹介し、起源や2進数の利点について学びました。
この授業では韓国人留学生の指導の下で化学反応を利用した金属版画を作りました。酸化還元反応を電子の移動と関連付けて勉強しただけではなく、韓国の国旗やハングル文字のしくみについても学びました。その後、生徒はアルミ板に自分の名前をハングル文字でデザインし、塩化銅水溶液と反応させることで個性のある金属版画を作りました。また酸化還元反応が実際の現場で利用されていることを学習し、化学と生活との密接な関係も学びました。
小学生に対して、新理数生・大学院生企画による数学(算数)実験ブースの出展を行うサイエンスルームを実施しました。
本授業では折り紙を使って一刀切り定理について学びました。また、授業の前半に線対称についての説明を行い、展開図に表れている対称な図形についても考えてもらいました。今回は一刀切りで二等辺三角形や魚、ハートといった図形を作りました。実際に図形が作れた時は嬉しそうな表情がたくさん見られました。その後、出来た図形の展開図から折り線をワークシートに記入して、対称な図形を見つけてもらいました。
今回の授業では、様々な昆虫(コウチュウ・チョウ・ハチ・バッタ・ハエ・カメムシ)が持つ「翅」を標本から観察し、スケッチしました。まとめでは、スケッチした特徴を基にしながらそれぞれの昆虫について学びました。また、授業を通して「コウチュウの後翅を見てみよう!」「ハエとハチを見分けるポイントは?」「チョウの翅の鱗粉ってどうなっているんだろう?」といった昆虫の不思議を体感しつつ、身近に生きる多様な昆虫にふれる機会を子ども達に提供できたと思います。
プロジェクト教員が小学生へ講義・実験を行いました。
講師:奈良教育大学 藤井智康
今年も、昨年に続き前日までの雨により「曽爾川の⽔質と⽣き物を調べよう」が実施できませんでした。 その代替として、海の環境と生態系について考えるための一つの方法として、「チリメンモンスターをさがせ!」を 行いました。海の中にいる魚の稚魚(仔魚)などを普段、食事で食べている「ちりめん」の中からさがし、 食物連鎖について考え、どの生き物がいなくなっても海の環境は良くならず、我々の食生活にも大きな影響を 及ぼす可能性があることを一緒に考えました。子どもたちは、真剣にチリメンモンスターをさがし、見つけたモンスターを同定(分類)していました。また最近、全世界で問題となっているマイクロプラスチックなどの海洋汚染の問題などについて考え、食生活を通じて人間の健康にも影響を及ぼす可能性があることについても一緒に考えました。
講師:奈良教育大学 石田正樹、松井 淳
1・2年生は学校のまわりで虫とりをしました。先生もおおぜいいっしょに虫をさがしました。今年はすぐに学校を飛び出して、はじめに坂道の草はらで虫をさがしました。バッタがばたばた捕れました。つぎに学校うらの細い坂道はスリル満点。がんばって登って畑に出ました。そのあと公民館の広場でまたばったばった。いろんな場所で虫とりができました。みんな自分のあみと虫かごをもって元気に虫を追いかけ、どの子のかごもいっぱいになりました。あ、でも「あたしはとらへんね」と言っていた子もいましたっけ。体育館にもどって図鑑でしらべてみると、スズメバチ、ヒメウラジャノメ、ナミアゲハ、コアオハナムグリ、ツマグロオオヨコバイ、アブラゼミ、ショウリョウバッタ、ポスタートノサマバッタ、クルマバッタ、キリギリス、ショウジョウトンボ、ミヤマアカネ、マユタテアカネ、アキアカネ、シオカラトンボ、ハグロトンボ、などなど…。名まえのわかった虫をまわして、もういちど観察しました。何匹かはうまいこと逃げて高いとこまで飛んでいったね。
閉校式では曽爾中学校教頭森田先生よりお言葉を頂き、引き続き奈良教育大学学長より挨拶がありました。その後、曽爾中学校生徒代表、新理数2回生代表の挨拶の交換が行われました。こうして2日間が無事終了しました。
閉校式の後、曽爾中学校音楽部から、演奏のお返しをいただきました。