奈良教育大学理数教育研究センターでは、令和7年8月28日~29日の2日間、県下山村部にある曽爾小中学校で「サマースクール 2025イン 曽爾」を開催しました。このサマースクールは、曽爾村との包括連携協力協定に基づいて行われたものです。本学が推進する、優れた教育実践力を持つ理数科に強い教員の養成を目的とした理数教育プログラムに参加する学生や教員が、理科・数学(算数)実験を中心とした特別授業を行いました。普段できない実験などを目の当たりにした児童・生徒は、驚きと感動を胸に授業に取り組んでいました。子どもから大人まで、素晴らしい曽爾の自然環境の中で、共に思う存分学びました。これらは、奈良教育大学及び曽爾村双方における教育・研究の充実につながる有意義な取組であり、連携協力事業として大きな成果をあげるものとなりました。
過去のサマースクール イン 曽爾
開校式ではまず、平松校長先生からお言葉を頂き、引き続き常田センター長、新理数2回生代表の挨拶がありました。こうして2日間のサマースクールがスタートしました。
7~9年生の生徒に、私たちの自己紹介を兼ねて、「奈良教育大学を選んだ理由」、「好きな教科とその理由」、「勉強をする意義」などのテーマで講演をしました。自分の好きな教科を介して勉強する意義を見つけ、将来の進路を自分で決めていった経験談等を通して、曽爾小中学校の生徒が自らの進路を考えるきっかけを作ることができたのではないかと感じています。講演の後には7~9年生とフリートークをし、大学生活のことなど様々なお話をしました。
講師:奈良教育大学 上村尚平
通常、虹は空気中の水滴によって太陽光が散乱されることで引き起こされます。光の波長によって水の屈折率が異なるため、太陽光が分光され虹色の帯が見えます。この講座では虹が見える原理を学び、実際に人工的に作られた虹を室内や屋内で観察しました。生徒たちはガラスの研磨剤を付着させたボール紙に光を当てることで、綺麗な虹の輪が生まれるのを見て、声をあげていました。
7~9年生に対して、新理数生企画による科学実験ブースの出展を行うチャレンジ!サイエンスを実施しました。
今回は数学の授業として、「直感とは異なる確率」について授業しました。その中でも、モンティホール問題を実際に対戦形式で取り組んでもらうことで前向きな姿勢で授業を聞いてくれていました。初めの仮説と異なった結果について考察することでさらに確率に対する興味を引き立てることができました。
今回は、理科で乳化について授業及び実験を行いました。水と油は基本的には混ざりませんが、身近なドレッシングや日焼け止めなどを提示し、混ざっているものもあることを学びつつ、実験では酢・醤油・洗剤のどれが水と油を混ぜられるかを確認し、更に別途用意された4つの乳化剤の中でどれが一番水と油を混ぜる力があるかを決定しました。 また、添加物として乳化剤が入っている食品を紹介し、理科と家庭科の繋がりを示すことができました。
3~6年生に対して、新理数生による理科・数学(算数)実験ブースの出展を行うサイエンスルームを実施しました。
今回は算数の時間として、3~6年生と「方べきの定理」に挑戦しました。大きな円と小さな円を使い、条件に合う点を探すゲーム「点探しゲーム」に取り組みました。子どもたちは「ここじゃない?」「見つけた!」と声を掛け合いながら活動に取り組み、円への理解を深めました。高度な内容でしたが、グループ内で協力して懸命に問題に取り組む姿が多く見られました。この時間を通して、子どもたちはさらに算数への興味を持ち、楽しく学ぶことが出来ました。
プロジェクト教員が3~6年生と1~2年生に講義・実験を行いました。
講師:奈良教育大学 藤井智康
昨年は、天候が悪く川での調査はできませんでしたが、今年は調査ができました。長年続けている川の生き物の種類と数から水質を判定する生物学的調査とパックテスト (COD:化学的酸素要求量)による 簡単な化学的な水質検査を行いました。ナガレトビケラ類、ヒラタカゲロウ類、ヒラタドロムシ類、ヨコエビ類、カワニナ類など きれいな川にいる水生生物や、カワムツなどの魚がたくさんみられました。大変暑く、熱中症も心配されましたが、子どもたちから「何かみつけた!」、 「川虫みつけた!」、「この生き物の名前は何?」など楽しく、元気に調査ができました。また、パックテストによるCODの値は、水を吸い込んだチューブ内が ピンク色に変化したことから0~2 mg/Lと低い値であることがわかりました。今年の調査においても曽爾川は「きれいな川」であると判定できました。
講師:奈良教育大学 信川正順
牛乳パックとレンズを使って天体望遠鏡を自分で作りました。直接、太陽を見てはいけませんが、遮光フィルムを使って太陽が見える望遠鏡にすることもできました。残念ながら曇りだったので太陽は隠れていました。代わりに遠くの景色を楽しみました。
講師:奈良教育大学 石田正樹、小長谷達郎
1・2年生は学校のまわりで虫とりをしました。虫とり名人や前期課程(小学校)の先生、大学いん生のお兄さんといっしょにいろいろな虫をとりました。草むらにはバッタやキリギリスがたくさんいました。大きなアゲハチョウはなかなかつかまえられませんでしたね。さいしょは虫をこわがっていた人も、さいごは手でさわれていましたね。きょうしつにもどってからずかんでつかまえた虫をしらべました。シオカラトンボ、アキアカネ、ウスバキトンボ、クルマバッタモドキ、ショウリョウバッタ、ショウリョウバッタモドキ、キリギリス、ジャノメチョウ、コカマキリ、オオカマキリ…。ことしもたくさんの虫たちにあえました。
閉校式では平松校長先生からお言葉を頂きました。引き続き今回のサマースクールの陣頭指揮をした高溝先生より挨拶がありました。その後、新理数2回生代表、曽爾小中学校生徒代表の挨拶の交換が行われました。こうして2日間が無事終了しました。