令和8年度奈良教育大学入学式 告辞(4月3日) - 奈良教育大学

令和8年度奈良教育大学入学式 告辞(4月3日) 大学紹介

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 桜満開の本日、加藤久雄 前学長・名誉教授、久保三左男 奈良教育大学同窓会竹柏会会長、松原さおり 同理事のご臨席を賜り、令和8年度奈良教育大学入学式を挙行できますことを、大変嬉しく思います。
 晴れて、教育学部に入学された271名、大学院教育学研究科に入学された56名の皆さん、ご入学おめでとうございます。あわせて、ご家族やご関係の皆様にも、奈良国立大学機構理事長、及び全教職員一同、心よりお祝い申し上げます。

 奈良教育大学は、明治7年(1874年)、奈良県初の教育伝習所「寧楽書院」として、現在の興福寺本坊に設置されたことに始まります。明治7年の奈良県内における小学校就学率は52.7%。翌、明治8年は57.5%と、当時においては全国トップクラスであり、それゆえ、この状況に対応すべく教員の養成が喫緊の課題となり、「寧楽書院」が開設されました。この年を、本学が「創基」された年とし、今年で152年を迎えます。
 その後、明治21年(1888年)、11月18日、現在の奈良公園バスターミナルがある地に校舎が設置され、「奈良県尋常師範學校」として開校されました。本学は、この年を「創立」とし、ここを起点にすると、今年は「創立138年」となります。いずれにしても、今日に至るまで、本学は一貫して、長く教員養成を担ってきました。その伝統と誇りある奈良教育大学に、希望をもって入学された327名の新しい「仲間」をお迎えすることは、学長として大変嬉しいことです。「おめでとう」という言葉とともに、「ありがとう」という言葉を添えたいと思います。

 さて、私の専門は音楽です。音楽を構成する最も主要な要素(素材)は何でしょう? それは、「音」です。作曲者や演奏者は、音にいろいろな変化を与え、連ねたり、重ねたり、秩序立てたり、といった操作を施し、美しく楽しい「音楽」へと形づくっていきます。それは「音を育てていく作業」とも言えるでしょう。
 では、社会を構成する最も主要な要素は何でしょう? それは「人」です。人もまた、他者と繋がったり、法やルールといった秩序を構成したりしながら、平和で暮らしやすい社会を形づくっていきます。

 ここまで述べると、本学に入学された皆さんなら、この後に学長は何と言うか、容易に想像できるでしょう。「音を育てるのは作曲者や演奏者」。では、「人を育てる人は誰か?」という問いです。人が人を育て、人が社会を育て、また逆に、社会も人を育てる、これが人と社会がともに育つ構造だと言えるでしょう。さらに、人が育つ源流にあるものは、乳幼児期の教育と、それに続く学校教育です。特に小学校・中学校・高等学校での教育を「初等・中等教育」と言います。子を誕生させてから、長くその子を育てるのは「親」です。一方、学校という場で、子供を育てる人は「教師」です。先ほど、「人が育つ源流」と申しましたが、それにあたる「初等・中等教育」は、人生の基盤となるきわめて重要なステージです。つまり、そのステージで人を育てる役を担う教師は、人の一生を決めるかもしれない、そして社会の基盤をも築く、とてつもなく重要で責任のある仕事です。

 皆さんは、その重要な担い手になることを夢に抱き、本学への入学を志したものと思います。また、大学院に入学された現職の先生方も、留学生も、今もなお、その夢を追って入学されたことと思います。私たち奈良教育大学のすべての教職員もまた、この重要な「教師」「教育者」を育てるために、日々、研究を続け、皆さんを育てようとしています。人の命を救う医師を育てる高等教育機関は医学部ですが、人を育てる教師を養成する高等教育機関は教育学部であり、教育学研究科です。
 先ほど、「『仲間』になってくれてありがとう」と申しました。これからは皆さんも奈良教育大学の一員として、日本、そして世界の教育のため、子供や人々のために、一緒に頑張ろうではありませんか。やがて皆さんが育てることになる子供が、人々が、平和で豊かな未来社会を創っていくのですから。

 さて、奈良教育大学は、この4月から2035年までの中・長期的ビジョンを新たに立てました。そのビジョンは、「多様な人々に学びの機会を提供し、教育によって地域創生や持続可能な社会創造に貢献する大学」になることです。「多様な人々に学びの機会を提供する」とは、生まれたばかりの子供、いや妊娠中のお母さんから始まり、子供、大学生、そして「人生100年時代」を逞しく生きていらっしゃるご高齢まですべての方々のすべてに対し、学ぶ機会を提供する、ということです。
 また、「教育によって地域創生や持続可能な社会創造に貢献する」とは、高度な力量をもつ教師を育てて学校教育を発展させることや、本学が生み出す研究成果や、本学が有する教育に関わるすべての人的・物的資源を、地域創生や持続可能な社会創造のために投入する、ということです。
 人が社会を創るわけですから、「人」を育てることによって社会創造に寄与する。そうすることが、教育大学としての本学の使命である、ということです。これからの日本は少子化が進み、この奈良県においても特に中南部において過疎化が進んでいます。このままでは、日本の経済力も低下し、いわゆる地方も衰退していってしまいます。このビジョンは、それに歯止めをかけようという、奈良教育大学の新たなチャレンジなのです。
そして、このビジョンを実現するために、3つの使命(ミッション)を掲げました。1つ目は、「新人教員の養成と輩出」、2つ目は「現職教員と学校教育の支援」、そして3つ目が「教育による地域・社会貢献」です。この3つの意義と、そのための目標や取組は、「2035年に向けた奈良教育大学のビジョン・ミッション・目標・主たる取組」として、一覧にまとめ、皆さんにも配布しておりますので、後ほどご覧ください。

 次に、奈良教育大学の特色と強みを申し上げます。教員養成大学や教育学部は、全国に多数あります。皆さんはもしかして、大学の偏差値で本学を選んだのかもしれませんが、この特色と強みを理解し、4年間、あるいは大学院2年間の学修を積んでいただければ、きっと「奈良教育大学出身ならではの強みを持った教師」として、自信を得ることができると思います。

 その第1は、奈良女子大学とともに一つの国立大学法人になっていることです。両大学それぞれの学生にとって、それぞれの大学だけでは不足する資源を互いに提供し合い、皆さんを育てます。また、奈良女子大学のみならず、近隣の学術機関との連携を築いています。例えば、奈良先端科学技術大学院大学、奈良県立大学、奈良県立医科大学、奈良工業高等専門学校、奈良国立博物館、奈良文化財研究所、奈良県立橿原考古学研究所、等です。その連携により、皆さんの教養、専門性、国際性、そして分野を超えた学びを提供します。
 配布物に案内を入れておりますが、8月に行われる「奈良カレッジズ学問祭」は、奈良における最先端の研究成果を学ぶことができますので、是非受講してください。保護者の皆様や市民の方々も、本年度から受講できるようにいたしましたので、ふるってご参加ください。

 第2は、本学は、全国の大学としてユネスコスクール第1号に認定され、「持続可能な開発のための教育」(ESD:Education for Sustainable Development)を推進し、全国を牽引していることです。「持続可能な社会」という言葉は高校でも学んだことと思います。平和、環境、資源、防災・減災、など、地球規模で人間の尊厳、ウェルビーイングを実現し、持続可能にしていかなければなりません。SDGsもご存じのことと思います。その17の目標を実現させていくための教育がESDです。本学の正門に、ユネスコから寄贈されたユネスコスクールのプレートが収められていますので、見て、触って、入学記念の写真を撮り、持続可能な社会の創り手となることを誓ってくだされば嬉しいです。

 第3は、「奈良の地にある」ということです。数々の文化遺産や国宝に囲まれて学生時代を過ごせることは、奈良教育大学でしか経験できません。奈良の歴史、文化の理解を深め、自らの教養を高めてください。

 第4は、「小さな総合大学である」ということです。1つの学部の中に、人文社会系、自然科学系、芸術系、スポーツ系、そして教育学系があります。ただし、これは他の教員養成大学でも同じです。皆さんに強くお願いしたいことは、この学修環境のもと、自分の専門や専修、課程に留まらず、その枠を超えて学生や先生方との交流を築いてほしい、ということです。これは、サークル活動などでも可能ですが、本学のカリキュラムでもその機会を与えています。
 例えば、本年度から新たに『教育のための科学基礎論』を、学部の必修科目として開講します。本科目では、「科学」を切り口として、理科や数学にとどまらず、歴史・伝統文化・芸術等、多様な学問的見地から、皆さんがもつ科学に対する捉え方を揺さぶり、子供たちとともに科学的営みの面白さと豊かさに目を向けることができる素養を身につけていただきます。また、この科目は、文理の垣根を越えた教員チームにより実施されます。ぜひ、ご期待ください。
 国語教育専修は国語だけ、音楽教育専修は音楽だけを学ぶ、という意識ではなく、自分の強みである専門と、分野を超えた力量の両方を身につける、という意識をもって、4年間、あるいは2年間を過ごしてください。

 第5は、ここ数年、本学と奈良県内の自治体や産業界との関係がより強化され、本学や本学学生への期待やニーズが高まっている点です。例えば、奈良市長からは、奈良市の課題として、「ムクドリの糞公害、高齢化社会に伴う紙おむつの焼却問題、JR新駅建設に伴い人手をかけずに埋蔵文化財を探索できる方法、等について、学生のフレッシュなアイデアをいただけないか」、と要望されています。
 皆さん、是非、積極的に学外に出て、学生によるまちづくりに参画してください。そうした機会の提供は、その都度情報としてお知らせします。情報は決して見逃してはならぬ。チャンスは二度と来ないかもしれない。決して逃すべからず。よろしくお願いします。

 こうした社会経験を積みながら、とことん教育についての知識や実践力を蓄え、研究し、教員免許状を得た上で、卒業・修了後は、それを活かして活躍していただきたいと思います。活かし方は、「教師になる」という方法もありますが、自治体で、あるいは民間企業で、身につけた教育についての専門性を活かして活躍するという道を選択するならば、それも大学は応援します。なぜならば、奈良教育大学は「教育によって地域創生や持続可能な社会創造に貢献する大学」だからです。
 これからの日本において、理系人材の育成が大学教育に求められています。それと等しく、教育系人材の育成は、地域創生のために、持続可能な社会創造のために欠くことはできないと考えます。皆さんにはとことん教育を学び、教育のプロ、スペシャリストとして、社会で活躍していただきたいと願います。そのために、奈良教育大学でのさまざまな学びと経験を充実させてください。

 最後になりますが、保護者の皆様に、ひとこと、ふたこと申し上げます。
 新入生をこれまで支え、本学への進学に向けて応援してくださったことに対し、深く感謝申し上げます。
 大学生・大学院生となったこれからも、親に頼ってきたら、頼ってくれることを喜び、いつまでも家族として、あるいは人生の先輩として、成長を支えてあげてください。一方、適度な距離を保ち、無理なく自立を促していただきたいと思います。

 それから、これはお願いです。
 ウクライナ、そして中東における戦争を起因として、諸物価の高騰は大学の財政にも影響をもたらしています。現在、どの国立大学も、安定した財政基盤を確立させることが極めて困難になっていることはご存じのことかと思います。
 本学でも、教員の研究等により外部からの資金獲得に努め、現時点では授業料を値上げすることを考えず、質の高い教育を提供すべく努力を重ねております。また、国立大学として、国民からの貴重な税金、そして皆様からの授業料によって支えてくださっていることに深く感謝し、教育の質を低下させることなく業務等の効率化を図り、健全な財政確立に努めて参ります。
 その上で、今後の奈良教育大学の発展が持続可能になるよう、また、学生の修学を支えていくために、どうかご寄付等賜りますよう、高いところからではありますが、切にお願い申し上げます。

 新入生の皆さん、奈良教育大学と奈良国立大学機構は、皆さんをいつも支え、応援して参ります。楽しく、充実した素晴らしい学生生活になることを心より願い、入学式学長告辞といたします。


令和8年4月3日

奈良教育大学 学長 宮下 俊也