奈良教育大学 理科教育講座の石田 正樹・田中 来実・堀川 諒人、山口大学 大学院創成科学研究科の堀 学・上野 秀一、および徳島文理大学 神経科学研究所の冨永 貴志の共同研究チームは、身近な微生物であるゾウリムシの体内から、水だけでなく「グリセロール(栄養)」や「尿素(老廃物)」も同時に通す、極めて珍しい多機能な細胞の“改札口(チャネル)”(PmAQP1:ゾウリムシアクアポリン1)を発見しました。この論文は、自由生活性原生生物の収縮胞が、水や老廃物を排出することを世界で初めて実験的に証明したものです。
池や田んぼにすむゾウリムシは、細胞内に入ってくる余分な水を「収縮胞」というポンプのような細胞内小器官に集めて外に汲み出すことで、破裂せずに生き延びています。石田 正樹はこの水分を集める仕組みを長年研究しており、2024年度にはその功績から「ゾウリムシ収縮胞における水分集積機構に関する研究」という題目で日本原生生物学会の学会賞を受賞しました。
今回、この研究チームは、ゾウリムシが持つ「ゾウリムシアクアポリン1」というタンパク質に着目しました。このタンパク質は、これまでに収縮胞の機能に関わることは証明されていましたが(DOI: 10.1111/jeu.12843 )、実際にどのような物質を通過させているのかは不明でした。この度の論文では、このタンパク質をカエルの卵に発現させ、詳しく解析したところ、水だけでなく、エネルギー源となる「グリセロール」や、不要な「尿素」までをも同時に通す『多機能チャネル』であることを世界で初めて突き止めました。
過酷な自然環境を生き抜く微生物が、限られた資源をいかに効率よく体内でコントロールしているかを示す、極めて重要な発見です。本論文はその学術的価値から、国際学術誌『Journal of Eukaryotic Microbiology』に「修正なし(ストレート アクセプト)」で採択されました。
本研究によって、微生物の驚くべき生存戦略の一端が分子レベルで明らかになりました。この「1つで何役もこなす効率的な輸送の仕組み」は、将来的にバイオテクノロジー分野における高性能なろ過膜の開発や、生物の環境適応能力を応用した新しい技術開発につながることが期待されます。
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