学長実行プラン(令和4年度~5年度) - 奈良教育大学

学長実行プラン(令和4年度~5年度) 大学紹介

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本文編

■ はじめに

 令和4年4月1日、国立大学法人奈良国立大学機構大学総括理事、及び奈良教育大学学長を拝命いたしました。いずれも任期は2年間です。

 それを受け、令和4年4月8日、附属学校園を含めた奈良教育大学全教職員に対し、新学長としての所信を表明したしました。その後、その内容について教育研究評議会、教授会、附属学校部運営委員会において意見聴取し、「学長実行プラン(令和4年度~5年度)」として定め、ここに公開いたします。

 言うまでもなく、この実行プランは学長一人でなし得るものではありません。第4期中期計画も含め、学内外の協力を得て、奈良県はもとより、全国、そして世界の教育の発展に貢献できる奈良教育大学を樹立していくよう努めて参ります。

■ 基本的な方針

1.議論の尊重

 教学の場、職場として、最も重要視したいことは「議論を尊重する」ということです。これは、本学がこれまでとても大事にしてきたことであり、小規模大学であるからこそ可能なことでもあります。また、教育大学として、「ものごとはこのようにして決め、進んでいくものである」ということを、学生にも示さなければなりません。

私は、リーダーの立場で議論に参加し、リーダーの立場で提案や発言はしますが、それも含めて大学構成員から出された様々な意見も交えて議論し、意思決定を行いたいと思います。そして、本機構の大学総括理事として、奈良教育大学を「国立大学法人ガバナンス・コード」に即した質の高い高等教育を維持・発展する機関として運営するよう努めます。

 

2.「奈良教育大学ダイバーシティ・インクルージョン推進宣言」について

 令和3年4月に「奈良教育大学ダイバーシティ・インクルージョン推進宣言」(日本語版、英語版、中国語版)を制定し、令和4年3月には、その「子ども版」も策定いたしました。今後は、宣言だけに留まることなく、ダイバーシティとインクルージョンの推進を「行動」に移していかなければなりません。そして、中期計画の指標に掲げた「卒業・修了時アンケートにおける、ダイバーシティ・インクルージョン推進宣言の効果に対する肯定的評価が60%以上」になるよう、本年度から取り組んでいきます。

 また、ハラスメントについては、常にその防止に努めます。ハラスメントは、その「芽」が発生した時、あるいは発生しそうな時、いち早く対応することが大事です。引き続き、全教職員及び学生に注意喚起を図るとともに、「芽」が発生しそうになったらすぐに対応できる体制を維持します。

 

3.芸術に触れることのできるキャンパスに

 本学は、豊かな自然や世界遺産を含む多くの伝統文化遺産に囲まれています。これは、教員を養成する場として絶好なロケーションと言えるでしょう。

 令和3年度は、ラーニングコモンズで陶芸や書道の作品、また、3Dプリンタを用いて伝統と現代を融合させた作品が展示されました。以前には、学生の現代アートがキャンパス内に面白く展示されたこともありました。また、学生オペラや書道・造形作品展なども定期的に開催されています。さらに、本学教員には、作曲、ピアノ、声楽、陶芸、書など、日本を代表する一流の芸術家がおられます。

 このような実績をさらに発展させ、本学が持つポテンシャルを十分に活用し、本学や奈良女子大学の学生・教職員、そして子どもを含む地域の皆様が、様々な芸術に触れ、感性を磨くことのできるキャンパスづくりを実行します。

 

4.新たな「単科教育大学」として

 第3期中期目標・中期計画期間においては、「地域密着型」として、奈良県への教員輩出や教育支援に力を尽くしてきました。このことは第4期においても変わりなく加速させていきます。

 一方、ユネスコスクールである本学は、「持続可能な開発のための教育」(ESD:Education for Sustainable Development)に力を注ぎ、「ESDなら奈良教育大学」と言われるまでになり、「ESD・SDGsセンター」も新設することができました。これは本学の絶対的な強みです。今後は、「持続可能な社会の創り手」を確実に育成できる新人教員の養成に努めるとともに、「奈良教育大学でESDを学びたい」という全国の現職教員が、職場を離れることなく本学教職大学院に入学できるシステムづくりを行っていきます。

 単科教員養成大学は、他の大学にある教育学部とはミッションで異なる部分があって然りと考えます。それは、地域の教員養成・教員研修に加え、この国全体の教育改革に関わる研究や実践開発を行い、それらの成果やモデルを提出していくことでしょう。その時、本学は小規模であるので、まずは、ESDでその推進を加速したいと考えます。その実現のために、「持続可能な社会の創り手」を育てることのできる教員の養成とともに、全国各地の先生方が自主的にESD研修を行い、そこから質の高い実践が拡がっていくような素地をつくります。

 さらに、我が国はESDの提唱国でもあることから、本学は全国の推進拠点であることに留まらず、世界のESD研究と実践を牽引していくことが期待されており、実現も可能であると考えます。そのために、ESD・SDGsセンターを中心に、全学を挙げてESDに関わる国際交流の機会を計画し、実施します。令和3年3月に本学が刊行した『学校教育におけるSDGs・ESDの理論と実践』に、附属を含めた本学の多くの教員が執筆したことからも、全学を挙げてのESD推進は可能であると考えます。

 新人教員の輩出については、国立大学の使命として教員就職率の水準を維持・向上していくことに変わりはありませんが、例えば「一度企業に就職した後で教員を目指したい」という学生の希望は尊重すべきであり、近畿圏の各教育委員会からの聞き取り調査においても、様々な経験を通して広い視野や教養をもつ教員を採用したいという声が寄せられています。大事なことは、社会人たる教員としての優れた資質・能力を身に付け、現場でそれが生きて働く教員を養成することです。したがって、教員就職後の就職先から受ける評価を指標とし、その結果をフィードバックして、就職支援や教員養成教育の改善を図っていくことを第4期中期計画に掲げました。これもまた、新しい教員養成大学の在り方の一つであると考えます。

 

■ 具体的な取組

1.入学者受け入れについて

 引き続き、アドミッションポリシーに即した入学者選抜を実施します。また、本学の特色や教職の魅力を高校生に伝えるため、奈良県次世代教員養成塾への協力とともに、県内をはじめとする高等学校進路指導担当の先生方との対話の機会を多く設けます。

 令和4年度に改組した新大学院においては、専門職学位課程(教職大学院)は、全国のモデルとなる「奈良県公立学校教員採用候補者選考試験合格者に対する特例措置」の周知をより一層図り、奈良県教育委員会とともに「養成と採用の一体的推進」を進めます。また、学校教育を通してSDGsの達成に貢献することや、研究を通して高度な実践力を身に付けたいと考える全国の学部卒業生・現職教員・社会人に対して、新教育課程や取組の成果を発信します。

 修士課程については、教育学修士を有して伝統文化の持続発展や国際理解教育に貢献することを希望する国内外の学生・社会人の受け入れを促進するため、新たな取組や成果を発信していきます。

 

2.学部教育課程について

 「創造性」「多様性」「持続可能性」をキーとする新たな教育課程の編成に取り組みます。また、教員としての資質・能力の基盤となる感性、社会性、国際性を、教育課程外においても育んでいくことのできるシステムや環境づくりを行います。さらに、国や各教育委員会からの要望が強い、複数校種や複数教科免許状の取得、特別支援教育への理解と実践力の強化についても検討を進めます。

 

3.大学院教育課程について

 令和4年度より、新専門職学位課程と新修士課程が発足しました。その教育課程については確実に実施するとともに、両課程大学院生からの声を聴きながら丁寧な学修支援、研究支援に努め、第4期中期計画の評価指標に掲げた修了生の満足度について、目標達成を目指します。

 

4.就職支援について

 第4期中期計画に、学部、大学院とも、「就職者に対する1年後の評価」を掲げたので、まずその評価の観点を作成することを行います。学部や教職大学院における教員就職率はこれからも高水準を目指さなくてはなりません。教員就職支援プログラムは、新たなものも立案しつつ、就職支援室やキャリアアドバイザーを中心に、全学を挙げて引き続き実施していきます。

 学部や修士課程における教員以外の就職については、在学中の進路指導を充実させ、特に企業就職については奈良女子大学の就職支援も得ながら、学生の希望が叶えられるよう努めます。

 

5.学生生活について

(1)新型コロナウイルス対策

 学生の生活や課外活動については、まだ当分、新型コロナウイルス感染防止にあたっていかなければなりません。新たな感染拡大期も予想される中、従前のように感染者が拡大したら制限する、減少したら緩和する、ということの繰り返しでよいのかどうか、保健センター長や学生支援課、教務課、緊急事態等対策会議で慎重に検討していきます。

(2)学生との対話

 学生生活の実態、大学への要望、新しい取組についてのアイデアなど、学生の声を聴く「学長との懇談会」を定期的に設けます。そこでのやり取りは、大学ホームページによって全学に公開し、学修環境の改善に努めます。

(3)留学生支援・国際交流

 留学生の学修活動や日本人学生との交流については、これまでも素晴らしい取組がなされています。留学生や日研生、教研生の学習発表会は質的に高いものであり、日本人学生にとってもそれに出席することは国際交流の場として絶好の機会となるものです。このような留学生支援や日本人学生との交流については、留学生担当教員のみに任せるのではなく、全学教員が関わって新しいアイデアを出し、実施できるよう支援します。

 海外の大学等の提携については、新修士課程への留学生入学者も増やしていかなければならないことから、提携大学の開拓を検討します。一方、これからの新人教員は、外国語の習得のみならず、グローバルな視野や思考力が求められます。そのため、短期間であっても留学や海外での生活経験を提供できるよう、国際交流推進室とともに、それを実現する仕組みを検討していきます。

 

6.学内各センターについて

 第4期に向けては、次世代教員養成センターのみ、再編を図ったところです。他のセンターについては、このまま存続させるか、あるいは再編させるかについて、各センターと協議しながら検討します。また、法人統合を機に、奈良女子大学や、奈良カレッジズの一組織として予定している奈良先端科学技術大学院大学の各センターと協働できる取組については、それを推進するための組織改革を計画し、補助金を獲得するなどして実行していきます。

 センターは、学外への貢献が強く期待される組織です。引き続き、教育大学として研究の推進と、その成果を教材開発などによって、奈良県はもとより全国の教育現場に提供できるよう、センターの存在と成果をさらに発信できるよう努めます。また、本学におけるカーボンニュートラルの実現は、ESDを推進する本学において目指さなければならないものと考えます。このことは、自然環境教育センターを中心に期待するところです。

 

7.附属学校園について

(1)本学3附属学校園共通の取組

 中期計画には、本学3附属共通のものとして「奈良県や奈良市の教育委員会と連携して、地域の教育課題の解決に資する実践事例を作成・提供し、地域のモデル校を目指す。あわせて、ユネスコスクールとして幼小中で一貫したESDカリキュラムとそれを具体化したESDカレンダーの開発を進め、教育モデルとして全国に提供する。」と掲げています。

「奈良県や奈良市の教育委員会と連携して、地域の教育課題の解決に資する実践事例を作成・提供し、地域のモデル校を目指すこと」については、附属の教員と大学の教員との共同開発も必要であると考えます。よって、奈良県や奈良市のニーズや課題の把握に努め、どのような実践事例を作成すべきか、そしてどのように計画を立てて実行していくかを、附属学校部運営委員会委員長及び地域教育研究拠点長としてもサポートし、進捗状況の確認などを行いながら進めていきます。

 「幼小中で一貫したESDカリキュラムとそれを具体化したESDカレンダーの開発」は、ESD・SDGsセンターのアドバイスや協力をもとに、3附属と同センターとでプロジェクトチームを結成するなどして、適切で全国的なモデルになり得るものの作成を期待し、支援します。

 本学附属学校部運営委員会は、令和4年度よりその組織をスリム化しました。それにより、校園長・副校園長と学長との意思疎通がダイレクトに繋がるようになりました。今後は、定例の委員会だけではなく、柔軟に報告・連絡・相談を行うとともに、必要に応じて職員会議にも参加し、現状把握と要望聴取に努め、特色と魅力にあふれる附属学校園のさらなる発展と広報に尽力します。

(2)附属幼稚園

 「満3歳児保育を含むこども園化」への移行は最重要タスクとして位置付けています。文部科学省初等中等教育局幼児教育課や内閣府等との連携を緊密に図り、具体的なプランを提示しながら粘り強く実現に向けて進めていきます。

(3)附属小学校

 「様々な発達的課題や生活背景等、児童の多様性に対応するインクルーシブ教育について実践研究を行う。」とした中期計画の実施・実現に向け、すでに開始されている特別支援教育センターや大学教員との共同研究がさらに計画的に加速するよう支援します。

 また、一人1台のタブレット型端末が配備されたことを受け、すべての児童が自宅においても安心・安全に利用できるよう支援したいと考えます。なお、ICTの活用はそれ自体が目的となってはいけません。児童の学習がより活性化するために用いる、という原則を見失わず、どのように活用を図っていったらよいか、他の公立学校の例も参考にし、また情報センターや本学の情報に詳しい教員のサポートも受けながら進めていきます。

(4)附属中学校

 「ホールスクールアプローチとしてのESD推進を教育活動の柱とし、将来社会に向けて、問題発見と課題解決に向かう人材を涵養するべく、STEAM教育とESDを融合した教育内容の開発を進める。また、そのための情報活用能力と創造性を育むICT教育についての実践研究を行う。」とした中期計画の実施・実現に向け、ESD・SDGsセンターや情報センターの協力を得ながら支援します。また、この研究結果を全国に発信できるよう広報を強化します。

 

8.奈良女子大学・奈良カレッジズとの連携について

 奈良女子大学との法人統合により、両大学協働で運用する「連携教育開発センター」が新設されました。そこでは、教養教育チーム、教員養成チーム、情報教育チーム、附属学校チーム、教員研修チームが組織されましたが、本センターの担当責任者として、両大学の学生や現職教員のために次のような新しい取組を企画し、実施に向けて支援します。

 教養教育については、両大学に開講されている教養科目(一部科目を除く)の共通化をさらに進めるとともに、令和4年度から始まる「教養教育ウィーク‐奈良カレッジズ学問祭‐」を毎年実施し、異分野や異領域に関わる研究者や奈良女子大学学生等との交流により、本学学部生・大学院生の視野や教養の拡大を図ります。また令和5年度以降は、一般市民、現職教員、高校生なども聴講可能とし、本学学生にとって学問を媒介とする刺激的で魅力ある交流の機会が拡がるよう努めます。

 教員養成については、教職課程の共同化を徐々に進めていきます。また、奈良女子大学工学部や、まもなく構築する奈良カレッジズの諸機関との連携により、理数、工学、情報に強い教員の養成や、教員や教育者として必要な専門的知識、研究力、自分とは異なる分野の研究者とのコミュニケーション能力等を育成します。

 教員研修については、両大学教員や附属学校教員の協働により、先駆的な教育実践モデルの開発や学校支援等を行い、奈良県や全国の現職教員研修に貢献します。

 両大学6附属学校園の協働・連携については、それぞれの附属学校教育や教員養成教育の改善を図るとともに、全国や世界における初等中等教育の改善・発展に資する共同研究を推進できるよう支援します。

 

9.産学官の連携について

 これまで、教員養成大学における産学連携は、非常に困難なところがありました。一方、昨年度までの本学経営協議会メンバーや監事から、「企業における社員教育に、是非、教育大学の教育メソッドを提供してほしい」「特にSDGsの達成を掲げている企業には、積極的に関与してほしい」「とりわけ社員教育としての人権教育には苦労されている。協力してほしい」と言われております。

 今後は、学生の社会性を涵養したり、コロナ禍後の地域のレジリエンスに貢献したりすることを目的として、奈良県内の企業や地方自治体との連携を積極的に進めます。

 具体的には、ESD・SDGsセンター設置のための概算要求書に記した、「⑩企業のためのESDプログラムの開発と本学及び奈女大生を交えたプログラムの提供・外部資金獲得」を令和6年度より開始できるよう、計画を進めます。例えば、本学学生が企業に出向き、社員を前に大学で学んだことを基にプレゼンができたら、企業との接点もでき、素晴らしいと思っています。また、企業内研修に本学教員が関わり、そこに学生も参画させるなど、仕組んでみたいと思います。

 また、「奈良新しい学びの旅推進協議会」と本学教員との協働事業として、「奈良SDGs学び旅」が実施されています。今後は学生にも参加させ、奈良を訪れる修学旅行生や観光客に対し、本学学生がSDGsを視点に奈良をガイドできるような取組へと発展させたいと考えます。

 

10.本学教員の研究活動について

 大学教員にとって研究は「命」でもあり、それなくして大学教育は発展しないものと考えます。しかし、昨今では、教育や研究以外の業務による多忙化が進み、教員の個人研究や同僚との共同研究にかける時間的ゆとりが失せてしまっている現状があります。少しでも研究時間を確保できるよう、例えば、各種会議の頻度、会議時間、資料の数等、それが本当に教育のため、学生のために必要なものなのかどうか、自明と思われていることや疑いもなくルーティーン化していることはないかどうかなど、見直しの指示を出します。

 また、本学や領域を超えた多くの研究者と交流することは、新たな研究テーマの発見や、研究上のアイデアの創出が期待できます。そのため、機構本部棟等に新設する「異能交流ラボ」を積極的に活用していただきたいと思います。そこは、自由に時間を使い、様々な人と自由に交流できるスペースです。仕事の休息にも利用していただき、本学教員にとってもオアシスになることを期待しています。

 研究経費については、教員研究費の増額は見込めないので、引き続き、科研費等外部資金獲得には努めていただきたいところです。加えて、中期計画に掲げた「プロジェクトに関わる研究成果(論文、学会発表等)の公表」、「SDGsやESDに関する理解を深め、ESDを適切に指導できる教員として求められる資質・能力の育成を目的とした教育研究プログラムの開発と実施」、「先端科学・数学に関して、児童・生徒の考える力、課題探究能力を伸ばすための教育研究プログラムの開発と実施」、「発達障害のある幼児・児童・生徒が直面する困難を軽減するとともに、それぞれのライフステージに即した発達を促進するための学校外支援プログラムの開発と実施」の遂行、及び附属教員との共同研究には、可能な限り、学長裁量経費を投入します。

 

11.外部資金の獲得、とりわけポスト教員免許状更新講習について

 教員免許状更新講習の廃止が決定し、それによる収入減は本学にとって大きな痛手です。この先は、少しでもそれを補填する意味で、有償による公開講座や研修プログラム、市民のための教養講座などをさらに積極的に行っていきます。

 例えば、本学教員の専門を生かした公開講座などを有料にした場合、その収入を、大学教員(研究費)と大学に分配し、大学も、教員も、そして参加した方々も、気持ちよく実施・受講できるようなプランを地域・教育連携室とともに立案し、実施を進めたいと考えます。

 

12.教員組織、各種委員会、会議について

 教員組織としての現行の各講座について、課題を洗い出し、見直しを検討します。教教分離を実現したところですが、その利点を失うことなく、見直す必要があれば、改善案を出したいと思います。

 各種、室や委員会等の「会議」については、可能な限り実質的でスリムにしたいと考えます。例えば、開催頻度、オンラインやメール会議でも十分にできる議題はないか、資料は適切か、構成メンバーの数は本当に適正か、など、従前に捉われることなく検討を促し、必要があれば規程を改訂します。しかし、教員の負担が減ったとしても事務職員の負担が増加しては本末転倒です。そこのところのバランスをよく考え、実行していきます。

 

13.広報について

 広報は、大学にとって要です。最近では、HPのリニューアル、広報誌の充実、大学からのSNS発信、動画の作成と公開、なっきょんスタンプ販売、PC用壁紙・バーチャル背景の提供等、広報委員会や担当事務の尽力のもと、意義ある魅力的な広報が積極的になされ、充実してきております。

 しかし、広報すべき情報は際限なく増す中、広報担当事務のマンパワーや業務量も限界を超え始めています。学内の情報を広報担当が収集することには限界があるので、学長自身も広報すべき情報の収集に努めます。加えて、講座やセンター、あるいは教職員個々も、このような取組をした、こういう情報を発信したらどうか、ということを積極的にお知らせいただきたく思います。

 

14.事務機能について

 本学をあらゆる面で支えてくれている事務職員の努力には敬意を表します。

 一方、法人統合によって、事務職員の一部が法人本部に移り、本学にデスクを残した職員の負担が増えていることも事実です。法人統合後の事務組織については、やってみなければわからないことが多々ありましたが、そう長くないスパンで検証し、改善を図っていくことを、機構役員会等で提案することとします。

 また、事務職員一人一人の努力や成果を、互いに言葉などで認め合い、労い合うことのできる職場風土を築きたいと思います。現実に追われることで精いっぱいの中、どうしたら少しでもリラックスできるか、あらためて職員の声を聴き、総務担当副学長とともに考えていきます。

 具体的には、学長と事務職員の自由な懇談の機会を設けます。学長室が敷居の高いものではなく、職員にとっても、また教員にとっても、気軽に入室し、語り合える場にします。

 

■ さいごに

 これら以外についても、学長として力を注がなくてはならないことは多々あります。3月18日に中教審大学分科会で出された「内部質保証システム」に関わること(3ポリシーに基づく学修者主体の大学経営等)、FDのこと、「奈良教育大学教員のための研修プログラム」のこと、奈良県との連携事業(ICT、小学校英語、へき地支援等)のこと、教員の働き方改革、テニュアトラック制の導入などです。また、今後新たなすべき課題も出てくると思います。

 繰り返しになりますが、大学関係各位、学外関係各位のご理解とご協力を賜り、新しく充実した奈良教育大学を創造して参る所存です。

 

令和4年5月
奈良教育大学 学長  宮 下 俊 也

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